奈良の特産品といえる鮎。鮎は魚へんに占うと書いて「鮎」とするように、昔の人はこの魚を占いに使ったという。また、香魚と書いてあゆと読み、そのかぐわしい香りを、みずみずしい西瓜にたとえた。そして、春の遡上から秋の産卵までと、わずか1年でその一生をとじる鮎を年魚とも表現した。鮎を味わう料理には、はらわたを抜かずに姿のまま塩焼きにし、焼きたてをタデ酢で食べる「鮎の塩焼き」がある。また、素焼きにしたアユに練り味噌を付けて焼き目をつける鮎の魚田、姿寿司、甘露煮、はらわたの塩辛であるうるかなども人気がある。
旬 6月 7月 8月
鮎寿司
吉野山地の清流で育った天然のアユは、川の石に付いた藻を食べて成長します。その香りはスイカやきゅうりにたとえられ、「香魚」と呼ばれ、美味しいと評判です。このアユを使った姿寿司は吉野地域で有名です。もともとの「鮎寿司」は、1週間から1ヶ月熟成させる「なれずし」でしたが、独特の風味があり、時代の変化とともに姿を消しました。しかし、室町時代には樽と重石の開発により、発酵期間を短くし、飯も魚と一緒に食べる「なまなれずし」が生まれました。現在作られている鮎寿司は、すぐに食べるタイプで、アユの風味が爽やかで上品な寿司です。
歌舞伎や人形浄瑠璃の演目「義経千本桜」の中で登場する鮨屋が奈良県に実在していたことから、奈良の鮎寿司が人気を博しました。芝居の中で登場する釣瓶鮨は、ごはんとアユを詰めて発酵させたなれずしです。すし桶が井戸水を汲む釣瓶に似ていたため、「釣瓶鮨」と呼ばれるようになりました。この歌舞伎鮨屋の舞台となっている料理屋は今も老舗料亭として営業しています。
日本に現存する最古の鮨屋「つるべすし 弥助」(やすけ)は、穏やかに水をたたえる吉野川の近くに、800年以上も前から店を構え、現在の建物は昭和14年(1939年)に再建された、ベンガラの赤壁が目を引く木造3階建て。庭園の緑を愛でながら天然の鮎料理をコースで楽しめる。
アユは旬の夏から秋にかけてよく食べられます。昔からアユは縁起が良い食材として重宝されており、人が集まる席や祝いの日にも食べられることが多いです。
すし飯の上にアユを載せ、固く絞った布巾で押さえた「鮎姿寿司」は一口大に切って食べます。また、焼いたアユを載せた「焼き鮎寿司」もあり、こちらには山椒が入っていたり、タレで食べたりします。
主な伝承地域:吉野川流域
主な使用食材:アユ、米、酢など