一口大の酢飯にサバや鮭、小鯛などの切り身をのせ、防腐効果の高い香り豊かな柿の葉で包んだ押し寿司。箱を開けた時、几帳面に収まった寿司が印象的だ。江戸時代、保存がきかないサバなどの魚は、塩でしめられた状態で奈良に届いた。塩でしめられたサバをにぎり飯にのせて、柿の葉にくるみ、石を重しにして作ったのが始まりとされる。すし飯に使われているのは、粘りが弱く、ほどよい硬さを持ち、寿司米に好適といわれる滋賀県産の近江米“日本晴”。“サバ”は、古くから伝えられてきた柿の葉寿司の定番の味で、酢でしめたサバの切り身をのせたもの。青魚特有の風味が苦手な方は、あっさりと頂ける“サケ”や、淡泊でありながら滋味豊かな旨みの“鯛”がおすすめだ。
「柿の葉寿司」は、塩で締めたサバを酢飯と一緒に柿の葉で包んだ押し寿司のことです。
この寿司の由来には複数の説があります。江戸時代の中頃、高額な税金を課せられていた和歌山県の紀州の漁師が、お金を捻出するために、熊野灘で獲れた夏サバを塩で締め、山を越えて吉野川沿いの村へ売りに出かけました。ちょうどその頃、村々では夏祭りが開催されており、その祭りのごちそうとして柿の葉寿司が提供されたという説や、他にも保存食や兵糧として用いられていたものが変化していったという説があります。
柿の葉寿司には、タンニンが豊富で、緑色が鮮やかな渋柿の葉が使われます。酢飯と柿の葉に含まれる防腐効果により、柿の葉寿司は一晩寝かせることで、柿の葉の香りとサバの旨味が酢飯に移り、独特の風味が生まれ、より美味しくなります。
柿の葉の代わりに、山中に自生する朴の葉を使った「朴の葉寿司」が、端午の節句から7月にかけて作られます。作り方は柿の葉寿司と同じで、こちらも朴の葉の香りが酢飯に移り、美味しさが増します。
五條や吉野地域では、夏祭りの際に柿の葉寿司が提供されます。農村では、田植えが終わり、一息つける時期で、子供たちも手伝いながら寿司を作ります。サバは特別な日の料理として重要であり、お祝いの席でも食べられてきました。
食べ方のポイントとして、冷蔵庫で冷えすぎてしまった場合は、電子レンジなどで少し温めると美味しく食べられます。冬場には、「炙り柿の葉寿司」にすると美味しいです。柿の葉に包んだままオーブントースターで3〜4分焼き、柿の葉の表面が少し焦げてきたら食べごろですが、焼きすぎには注意が必要です。
主な伝承地域:五條市、吉野地域
主な使用食材:米、サバ、柿の葉