「ゆべし」というと和菓子を思い出す方が多いと思うが、奈良県十津川村周辺に伝わる“柚べし”は、ゆずを上部を切った後、中身をくりぬき、味噌やくるみ、しいたけ、大豆など、様々な具材を詰め込み、藁などを巻いて日陰で1か月から半年ほど乾燥させて作る、昔ながらの保存食だ。現代では珍味として、そのまま薄く切って食べれば、ゆずと味噌の風味のマッチした味がお酒のおつまみにぴったり。ワインのお供として食べるときはチーズにのせて食べるのがおすすめだ。
古くからある料理で、江戸時代の料理書『料理物語』には、ゆべしの製法が酒のつまみとして記されています。奈良県の十津川ゆべしもこの製法を受け継いでいます。
十津川ゆべし
主な伝承地域:十津川村
ゆずの中身をくりぬき、その代わりに味噌や米粉、そば粉などを混ぜて詰め、蒸してからわらで包んで干して乾燥させたもの。秋にゆずが旬を迎える十津川村で作られる。乾燥したゆずの皮はあめ色の光沢を帯び、口にするとゆずと味噌の香りが広がる。酒のつまみや、ご飯のおかずとして食べられる。
江戸時代には携行食として使われていたとされる。山で採った渋柿をとうがらし粉とともに孟宗竹の筒に入れ、乾燥させたものを原料とし、味噌を加えて兵糧丸としていた。現代の製法では、ゆずの実を収穫し、各家庭で作られている。
ゆべしという名前の食品は他の地域にも見られるが、地域によって異なる点に留意が必要。
製造方法
ゆずの上部を切り落とし、果肉を取り出す。味噌、米粉、そば粉、いりごま、かつお節、とうがらし粉などを混ぜて詰め、蒸してから干して乾燥させる。乾燥したら完成。原料は各家庭によって異なり、くるみやしそを入れることもある。1か月以上干すこともある。
主な食べ方
薄切りにしてそのまま食べる。酒のつまみやおかずとして利用する。お味噌汁の具や混ぜご飯の具として使うこともある。クリームチーズと合わせることもある。