當麻寺護念院は、奈良県葛城市にある名刹・當麻寺の塔頭寺院の一つで、中将姫の棲身旧跡寺院として広く知られています。當麻寺の信仰と文化を陰で支えてきた重要な存在であり、特に毎年行われる伝統行事において欠かせない役割を担っています。
護念院は、當麻寺最大の法要である「聖衆来迎練供養会式」の際に、楽屋として使用される寺院です。法要で用いられる菩薩面や装束の一切を管理しており、荘厳な儀式の裏側を支える重要な役割を果たしています。中将姫信仰と深く結びついたこの行事は、當麻寺の歴史と精神文化を今に伝える象徴的な催しです。
護念院の大きな魅力の一つが、趣の異なる三つの庭園です。日本唯一の雙塔(東塔・西塔)を借景とする庭園は、當麻寺ならではの景観美を楽しめます。
江戸時代初期に作庭された北庭は、静謐な雰囲気を湛える枯山水庭園で、石組みと白砂が調和した落ち着いた空間です。
江戸時代中期の作とされる西庭は、池を中心とした池泉鑑賞式庭園で、四季折々の自然が水面に映し出されます。
南庭は當麻寺の東西両塔を最も身近に望める庭園で、約千株の牡丹や、樹齢百年を超える大つつじ群が咲き誇ります。さらに、樹齢三百年のしだれ桜は多くの写真愛好家を惹きつける名木として知られています。
護念院には、長い歴史を物語る仏像や工芸品が数多く伝えられています。中でも、大正13年に発見された十一面観世音菩薩立像の版木は非常に珍しく、その尊容から鎌倉時代中期頃のものと考えられています。
・木造阿弥陀如来立像(鎌倉時代)
・木造阿弥陀如来坐像(平安時代後期)
・木造法如(中将姫)化生坐像(江戸時代)
・十一面観世音菩薩立像版木(鎌倉時代)
・梵鐘(奈良県指定有形文化財/南北朝時代)
護念院では年間を通してさまざまな法要が行われ、地域の信仰を今に伝えています。
・修正会(1月1日~6日)
・春の彼岸会(3月18日~24日)
・練り初め(3月末の日曜日)
・當麻寺聖衆来迎練供養会式・特別法話(4月14日)
・施餓鬼法要(8月28日)
・秋の彼岸会(9月20日~26日)
護念院は、真言宗と浄土宗の二宗が並立する當麻寺の歴史と信仰を支える重要な子院です。本尊である當麻曼荼羅と中将姫伝説を中心とした浄土信仰は、護念院の行事や寺宝にも色濃く反映されています。當麻寺を訪れる際には、ぜひ護念院にも足を運び、庭園の美しさと静かな祈りの空間を体感してみてください。