奈良では、月の中旬、天神さま(菅原道真公)の冥福を祈るために、天満宮の宮さんに氏子総代が参列し、神主さんによる祭儀が秋祭りとしておこなわれる。天神さんの守護物が牛であるため、牛肉のかわりに鶏をつぶして「かしわ(鶏肉)のすき焼き」をつくり、親戚などに振る舞っていた。奈良では、お祝いなどのときには、「かしわのすき焼き」が食卓にのぼるごちそうだった。「かしわのすき焼き」は、牛肉の代わりの鶏肉の他に、菜っぱや松茸を入れる。松茸の香りや肉の味が菜にしみておいしい。
関西地方では食用の鶏肉を「かしわ」と呼びます。かしわは、天満宮の秋祭りのお祝いの席では鶏のすき焼きが食べられてきました。この名前の由来は、鶏の茶褐色の羽色が、柏の葉に似ていることにあります。
戦前に「大和のかしわ」が「肉質が良い」として名声を博しました。その味を復活させるため、県が生み出した「大和肉鶏」は、コクと旨味、適度な脂肪、ほどよく締まった肉質が特徴です。
かしわを使ったすき焼きは、関西風すき焼きと同じように作ります。熱した鉄鍋に鶏の脂をひき、鶏肉を焼いて砂糖、醤油、酒で味を付け、肉が炊けたら、白ネギや九条ネギ、ゴボウ、焼き豆腐、シラタキ、麩などの具材を加えていきます。食べ方は、割りほぐした生卵をつけて食べるのが一般的ですが、温泉卵をつけても美味しいです。すき焼きの最後にはうどんを入れることもあり、うどんの代わりに三輪素麺を入れるのもおすすめです。
主な伝承地域:県内全域
主な使用食材:鶏肉、白菜、しらたき、焼き豆腐、ねぎ、しいたけ、きくななど