山盛りのほうれん草を土台とし、伊勢エビやタイなどの海鮮や野菜、湯葉ほか20種以上の素材を山状に盛り付けした鍋。特別にあつらえた土鍋と炭で煮込む。かつおと昆布がベースのあっさりとした出汁に、食材の旨みが広がり、その味わいはなんとも深い。ほうれん草を新緑の若草山になぞらえ、志賀直哉により命名されたこの料理は、奈良市の奈良公園の中にある明治40年(1907年)に料亭として開業した料理旅館「江戸三」でのみ味わえる。料理の提供される10月から3月にかけては食通が全国から足を運ぶ。食事だけの利用もでき、明治時代より文人や著名人に愛された名物鍋を茶室風の造りの趣のある和室で食べる。最高の贅沢と言えるだろう。