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寳山寺(生駒聖天)

(ほうざんじ いこま しょうでん)

古からの信仰の地で商売の神様を祀る

寳山寺は、奈良県生駒市門前町に位置する真言律宗の大本山で、生駒山の中腹に静かに佇む由緒ある寺院です。本尊は不動明王であり、とりわけ鎮守神として祀られる大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)への信仰で知られ、「生駒聖天(いこましょうてん)」「生駒の聖天さん」として広く親しまれています。

寺名の正式表記は旧字体の「寳山寺」ですが、一般的な案内や授与品では新字体の「宝山寺」も併用されています。古来より霊験あらたかな寺として信仰を集め、現代においても商売繁盛や家内安全、禁酒祈願など、現世利益を願う多くの参拝者が全国から訪れています。

生駒山中腹に広がる霊場

寳山寺が位置する生駒山は、奈良県と大阪府の県境に連なる山地で、標高642メートルの山頂を有します。この山は古くから修験道の修行地として知られ、修験道の祖・役行者(役小角)が鬼退治を行ったという伝説や、弘法大師・空海が修行したとされる霊地でもあります。

山中には滝行の場や祠が点在し、現在でも修行僧の姿が見られることがあります。こうした神秘的な環境の中で発展した寳山寺は、単なる観光寺院ではなく、今もなお生きた信仰の場としての性格を色濃く残しています。

修験道から江戸時代の再興へ

古代の信仰と修行の山

生駒山は、斉明天皇元年(655年)に役行者によって開かれたと伝えられています。当初は「都史陀山 大聖無動寺」と称され、不動明王を本尊とする修験道の道場として栄えました。その後、弘法大師空海もこの地で修行を行ったとされ、密教と修験が融合した信仰の山として発展します。

湛海律師による中興

現在の寳山寺の礎を築いたのは、江戸時代の僧湛海(たんかい)律師です。延宝6年(1678年)、荒廃していた伽藍を再興し、これを事実上の開山としています。延宝8年(1680年)には仮本堂が建立され、貞享5年(1688年)に本堂が完成し、寺号を「寳山寺」と改めました。

この再興により、寳山寺は聖天信仰の中心地として急速に発展し、特に大坂の商人たちから篤い信仰を集めるようになりました。

日本三大聖天の一つ、聖天信仰の中心

寳山寺は、歓喜天信仰の拠点として知られ、日本三大聖天の一つに数えられています。大聖歓喜天は、障害を取り除き、願望成就をもたらすとされる神仏で、特に商売繁盛の守護神として信仰されてきました。

毎月1日と16日には「歓喜天御縁日」が開かれ、早朝から多くの参拝者で賑わいます。とりわけ月初めの1日は、夜明け前から参道に灯りがともり、独特の厳かさと活気が漂います。

千段を超える参道とケーブルカー

麓から奥の院まで続く参道の石段は、約1,000段以上に及び、西日本有数の規模を誇ります。石段を一歩一歩登ることで、心身を清めながら参拝するという修験的な意味合いも込められています。

一方で、参拝者の増加に対応するため、1918年(大正7年)には日本初のケーブルカーである生駒鋼索鉄道(現・近鉄生駒鋼索線)が敷設されました。現在でも年間約300万人もの参拝者が訪れ、観光と信仰の両面から重要な役割を果たしています。

24時間参拝できる聖天堂

寳山寺の大きな特徴の一つが、聖天堂周辺が24時間参拝可能である点です。夜間でも受付が行われ、御守やおみくじ、祈祷の申込みができる体制が整っています。

これは、昼間は商売に従事する人々が、仕事を終えた後でも参拝できるようにとの配慮から始まったもので、現在も大切に受け継がれています。境内には自動両替機も設置され、深夜の参拝でも不自由することはありません。

本堂と聖天堂の見どころ

本堂

本堂には、湛海律師作と伝えられる不動明王像が安置されています。重層屋根を持つ護摩堂様式の建築で、正面に掲げられた「阿遮羅場」の扁額は、東寺学頭・賢賀の筆によるものです。「阿遮羅」は不動明王の別名として知られています。

聖天堂

明治10年(1877年)に再建された聖天堂の内陣には、大聖歓喜天の厨子が安置され、その背後には荒神、十一面観音、毘沙門天が祀られています。静謐な空間の中で手を合わせると、長い信仰の歴史を肌で感じることができます。

境内に点在する堂宇と霊跡

境内には多くの堂宇や史跡が点在し、散策しながら参拝する楽しみがあります。

主な見どころ

朝日宝塔(明治33年):銅製五重塔で、虚空蔵菩薩や大日如来を安置。
文殊堂(昭和53年):中興開基300年記念建立。獅子に乗る文殊菩薩を本尊とします。
観音堂:天保15年(1844年)再建。
般若窟:役行者が般若経を納めたと伝わる岩窟。
多宝塔(昭和32年):愛染明王を本尊とします。
奥の院本堂(安政3年):護摩道場として建立。
開山堂:湛海律師を祀る堂宇。

擬洋風建築・獅子閣

境内でもひときわ異彩を放つのが獅子閣です。明治15年(1882年)に上棟し、1884年に完成した擬洋風建築で、迎賓館として使用されました。色ガラスを多用した内部空間は、和洋折衷の美しさを今に伝えています。

獅子閣は建築面積92.1㎡の2階建てで、寄棟造・浅瓦葺の屋根を持ち、設計図や棟札を含めて国の重要文化財に指定されています。

文化財と寺宝

寳山寺には、数多くの貴重な文化財が伝えられています。

国指定重要文化財

・獅子閣(附:設計図・棟札)
・木造不動明王および脇侍像 五体
・銅造倶利迦羅竜剣 一本

絵画作品

「絹本著色愛染明王像」「絹本著色弥勒菩薩像」など、信仰と美術が融合した優れた作品が所蔵されています。

おわりに

寳山寺(生駒聖天)は、1300年以上にわたる生駒山信仰の歴史と、江戸時代以降に花開いた聖天信仰が融合した、日本でも稀有な霊場です。商売繁盛をはじめとする現世利益を願う人々の祈りは、今も絶えることがありません。

昼夜を問わず参拝できる開かれた寺でありながら、山中に広がる厳かな空気は、訪れる人の心を静かに整えてくれます。歴史、建築、信仰、そして自然が一体となった寳山寺は、観光としても、心の拠り所としても、ぜひ一度は訪れたい生駒市屈指の名刹です。

Information

名称
寳山寺(生駒聖天)
(ほうざんじ いこま しょうでん)
リンク
公式サイト
住所
奈良県生駒市門前町1-1
電話番号
0743-73-2006
営業時間

4~9月 8:00~16:30
10~3月 8:00~16:00
参拝は24時間いつでも可能

定休日

無休

料金

無料

駐車場
300台 無料
アクセス

生駒駅からケーブルカーで10分 → 宝山寺駅から徒歩で10分

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