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奈良国立博物館

(ならこくりつはくぶつかん)

国宝級の仏像が並び、奈良の歴史と文化を今に伝える

奈良国立博物館は、奈良県奈良市登大路町に位置する、日本を代表する仏教美術専門の博物館です。運営は独立行政法人国立文化財機構が担い、奈良公園の一角という歴史と自然に恵まれた環境の中で、貴重な文化財を守り伝えています。

周辺には東大寺や興福寺、春日大社といった世界遺産が点在しており、奈良観光の中心エリアにおける文化的拠点として、多くの来館者を迎えてきました。仏像や仏画、経典、工芸品など、仏教美術を体系的に鑑賞できる点が最大の特色です。

博物館の主な特徴と施設構成

仏教美術を中心とする展示内容

奈良国立博物館は、仏教美術を中心とした文化財の収集・保管・研究・展示をその使命としています。それに加えて、講演会や出版活動を通じた一般への普及啓発活動にも力を注いでいます。

展示施設の構成

館内の展示施設は、以下の5つの建物で構成されています。

このうち本館は、明治時代を代表する洋風建築であり、1894年に竣工しました。設計は宮廷建築家としても知られる片山東熊(かたやま とうくま)によるもので、現在では重要文化財にも指定されています。

展示される美術品は、館の収蔵品に加えて、奈良県内の神社仏閣や個人から寄託された品々も多く含まれています。毎年秋には、皇室ゆかりの宝物を紹介する恒例の「正倉院展」も開催され、全国から多くの来館者を集めています。

収蔵品とその規模

奈良国立博物館は、日本有数の文化財収蔵数を誇る博物館です。2020年時点で、館が所有する収蔵品は国宝13件、重要文化財114件を含む計1,911件にのぼります。さらに、寺社などから寄託された作品として、国宝52件、重要文化財306件を含む1,974件を保管しています。

これらの作品はすべて常時展示されているわけではなく、保存状態を考慮しながら定期的に展示替えが行われています。

国宝に指定される名品の数々

奈良国立博物館が所蔵する国宝は、日本仏教美術史を語るうえで欠かせない作品ばかりです。絵画・書跡・工芸・古文書にわたり、時代も奈良時代から中世まで幅広く網羅されています。

仏画・絵巻の国宝

「絹本著色十一面観音像」は、気品ある表情と繊細な彩色が特徴の名品で、近代日本を代表する政治家・実業家の旧蔵品としても知られています。また、「地獄草紙」「辟邪絵」は、平安時代の人々の死生観や信仰を生々しく伝える貴重な絵巻物です。

書跡・古文書の国宝

「日本書紀 巻第十残巻」は、日本最古の歴史書の古写本として極めて価値が高く、古代史研究の基礎資料とされています。また、最澄筆と伝わる尺牘(久隔帖)や、弘法大師空海による金剛般若経開題残巻は、日本仏教史を代表する名筆です。

工芸・仏具の国宝

牛皮華鬘蓮唐草蒔絵経箱などの工芸品は、仏教儀礼の中で用いられた実用品でありながら、高度な装飾技術を今に伝えています。信仰と美が融合した奈良時代・平安時代工芸の粋を感じることができます。

寺院から寄託された貴重な仏像・文化財

奈良国立博物館のもう一つの大きな魅力が、各地の名刹から寄託された仏像や文化財です。これらは本来、寺院で祀られていたもので、間近で拝観できる貴重な機会となっています。

中宮寺の「天寿国繡帳残闕」や、岡寺の乾漆義淵僧正坐像薬師寺の木造八幡三神坐像など、国宝級の仏像が数多く含まれ、奈良一帯の仏教文化の厚みを実感できます。

展示施設と建築の見どころ

奈良国立博物館は、展示内容だけでなく、建築そのものも見どころの一つです。明治から平成にかけて建てられた複数の建物が、時代ごとの建築美を伝えています。

なら仏像館(旧本館)

なら仏像館は、1894年竣工の歴史的建築で、設計は日本近代建築の父とも称される片山東熊によるものです。重要文化財に指定されており、重厚な煉瓦造りの外観と荘厳な展示空間が、仏像鑑賞にふさわしい雰囲気を醸し出しています。

東新館・西新館

東新館・西新館は、建築家吉村順三の設計による近代建築です。自然光を生かした展示空間が特徴で、仏教美術を静かに鑑賞できるよう工夫されています。特に東新館のチタン製屋根は、現代建築としても高く評価されています。

仏教美術資料研究センター

館内には仏教美術資料研究センターが併設され、仏教美術に関する資料の収集・整理・研究が行われています。建物は1902年竣工の旧奈良県物産陳列所で、こちらも重要文化財に指定されています。

毎週水曜日と金曜日には一般公開が行われ、研究施設でありながら、来館者が専門的資料に触れられる貴重な機会となっています。

その他の施設と文化的空間

敷地内には文化財保存修理所があり、仏像や工芸品の修理・保存が行われています。また、茶室八窓庵は、かつて興福寺大乗院にあった茶室を移築したもので、古田織部好みと伝えられる数寄屋風建築です。

奈良国立博物館の歴史

博物館設立の背景と目的

奈良国立博物館の前身は、1895年(明治28年)に開館した帝国奈良博物館です。設立の背景には、明治初期に実施された「上知令」や、廃仏毀釈によって失われかけた貴重な仏教文化財を保護する必要があったことが挙げられます。

当時、仏像や仏画など多くの文化財が破壊・流出し、寺社の経済的困窮も深刻でした。こうした中で、博物館を設立し、文化財の散逸を防ぐとともに、収入を寺社の保護にも役立てようという目的がありました。

奈良博覧会と文化振興の流れ

奈良国立博物館の設立に先立つ動きとして、1874年(明治7年)には奈良博覧会社が設立され、翌年には第1回奈良博覧会が開催されました。会場は東大寺大仏殿で、正倉院宝物や社寺の所蔵品などが公開され、のべ17万人が来場する大盛況となりました。

このような文化的ムーブメントのなかで、日本文化への再評価が高まり、奈良に本格的な博物館を設ける気運が醸成されました。

帝国奈良博物館から国立博物館へ

1889年(明治22年)、東京の博物館が「帝国博物館」と改称されるとともに、京都と奈良にもそれぞれ帝国博物館が設置されることとなりました。1892年から興福寺旧境内での建設が始まり、1894年に本館が完成、翌1895年に開館を迎えました。

館長は当初、奈良県知事の古沢滋が兼任していましたが、のちに山高信離が館長となりました。1900年には名称が「奈良帝室博物館」と改められ、1947年までその名が用いられました。

初期の展示と収蔵品の構成

開館当初の展示品は、皇室所蔵の「御物」や、東京の帝国博物館からの出品、個人所有者からの提供品が中心で、社寺からの出品はまだありませんでした。その後、1903年に開催された「奈良県下国宝展」をきっかけに、社寺からの寄託も盛んになっていきます。

戦後の再編と現在の奈良国立博物館

1947年の日本国憲法の施行により、博物館の所管は文部省へ移され、国立博物館奈良分館として新たなスタートを切ります。その後も組織や施設の拡充が進められ、現在の名称である「奈良国立博物館」として、日本文化の発信拠点として重要な役割を果たしています。

交通アクセスと観光の拠点としての魅力

アクセスは非常に良好で、近鉄奈良駅から徒歩約15分、市内循環バスでは「氷室神社・国立博物館」停留所下車すぐです。東大寺や興福寺とあわせて巡ることで、奈良の仏教文化を立体的に理解できるでしょう。

奈良国立博物館が伝えるもの

奈良国立博物館は、仏教美術を核とした文化財の宝庫であり、明治から令和に至るまで、日本の文化財保護と公開の最前線に立ち続けています。単なる展示施設ではなく、日本人の信仰と美意識、そして歴史そのものを今に伝える場です。仏像や経典に込められた祈りを感じながら、奈良という土地が育んできた精神文化に触れる時間は、観光の枠を超えた深い体験となるでしょう。

Information

名称
奈良国立博物館
(ならこくりつはくぶつかん)
リンク
公式サイト
住所
奈良県奈良市登大路町50
電話番号
050-5542-8600
営業時間

9:30~17:00

定休日

毎週月曜日(休日の場合はその翌日。連休の場合は終了後の翌日)
12月28日~1月1日

料金

一般 700円
大学生 350円

駐車場
なし
アクセス

近鉄奈良駅から徒歩で15分

バス:JR「奈良」駅、近鉄「奈良」駅→市内循環バス外回り2番「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ

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