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洞川湧水群

(どろがわ ゆうすいぐん)

神秘の水が湧き出る天川村

洞川湧水群は、奈良県吉野郡天川村洞川に点在する鍾乳洞から湧き出る地下水や湧水の総称です。豊かな自然に囲まれたこの地域は、吉野熊野国立公園の指定区域内にあり、古くから信仰の対象としても親しまれてきました。

天川村は、紀伊半島の内陸部に位置し、霊峰・大峯山の麓に広がる静かな山里です。古くから修験道が盛んであったこの地では、自然と共に生きる文化が今も息づいており、洞川湧水群もその一部として人々に守られてきました。

地質と自然条件が生み出す湧水

この地域の地質は主にジュラ紀以前の山上ヶ岳層群で構成されており、石灰岩を中心に、緑色岩類、頁岩、チャートなどが含まれます。特に、カルスト地形と呼ばれる浸食地形が見られ、地下に多数の洞窟が存在しています。その数は確認されているだけでも30か所以上にのぼり、代表的な鍾乳洞には「五代松鍾乳洞」や「面不動鍾乳洞」などがあります。

この地に降る豊富な雨が石灰岩を浸食し、地下水となって再び地表に湧き出すことで、清らかな湧水が誕生します。周囲のブナの原生林や、吉野杉の人工林が涵養林として機能しており、雨水を蓄えることで持続的に水源を保っています。

代表的な湧水地の紹介

神秘の水を湛える「神泉洞」

自然と信仰が融合した霊場

神泉洞(しんせんどう)は、神秘的な雰囲気を漂わせる鍾乳洞であり、その内部には清水が流れています。この場所は古来より「神の水」として崇められ、地域住民にとって神聖な場所とされてきました。

市販される「大峯山の天然水」

神泉洞は現在、民間企業により管理されており、一般の立ち入りはできませんが、洞内の湧水は「大峯山の天然水」として商品化されています。この水はパイプラインを通じて工場に送られ、0.1μmのマイクロフィルターで濾過された後、非加熱でボトリングされています。自然そのままの味わいを堪能できる貴重な水です。

水質の特徴

神泉洞の湧水は弱アルカリ性の軟水であり、以下のような特性を持っています:

石灰岩地帯特有のカルシウムイオン(Ca2+)や炭酸水素イオン(HCO3-)が主成分で、身体にやさしい水として知られています。

音に名の由来がある「ごろごろ水」

五代松鍾乳洞近くに湧く清水

ごろごろ水は、奈良県の天然記念物にも指定されている「五代松鍾乳洞」の近くに湧く湧水です。この名は、水が地下を流れる際に響く「ゴロゴロ」という音に由来しています。地下に存在する水中鍾乳洞からの水音が、静かな森の中に心地よく響きわたり、訪れる人々を癒しています。

「ごろごろ水」は、飲料水として人気が高く、地元住民のみならず、遠方から訪れる観光客にも親しまれています。容器を持参して汲みに訪れる方も多く、自然の恵みを直接感じられるスポットとなっています。

守護神と伝承をもつ「泉の森」

洞川地区の表鬼門を守る水源

泉の森(いずみのもり)は、洞川地区の入口に位置し、「泉之森霊泉(いずみのもりれいせん)」として知られる湧水地です。この地は、鬼門の方角に守護神を祀る風習が残る場所であり、災厄や疫病を防ぐ神聖な地とされています。

泉の森は表鬼門に当たるため、特に大切にされており、樹齢300年以上の神木の朽ちた幹の穴の奥にある洞穴から清水が湧き出しています。この水も「神の水」として尊ばれ、今もなお地域住民によって丁寧に保全されています。

環境省による名水百選への選定

自然と共生する文化の証

1985年(昭和60年)7月22日、洞川湧水群は環境省により「名水百選」の一つに選定されました。この選定は、地域の自然環境が良好に保たれていること、水質が優れていること、そして住民による保全活動が評価された結果です。

神泉洞、ごろごろ水、泉の森の三箇所の湧水は、いずれも歴史と文化、そして信仰の対象として大切にされてきた場所であり、今もその姿を変えることなく訪れる人々を魅了しています。

まとめ:洞川湧水群の魅力

心と身体にやさしい清らかな水

洞川湧水群は、単なる水源ではなく、信仰や自然、歴史、文化が調和する特別な場所です。澄みきった水の流れと静寂な森の音に包まれるこの地では、都会の喧騒から離れたひとときを過ごすことができます。

天川村を訪れた際には、ぜひ洞川湧水群の各所を巡り、その清らかな水と自然の恵みに触れてみてください。自然の力に癒され、心も身体も清められることでしょう。

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洞川湧水群
(どろがわ ゆうすいぐん)

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