上湯温泉は、奈良県吉野郡十津川村の出谷(いでたに)地区に位置する、歴史ある温泉地です。奈良県の最南端に位置する十津川村は、日本最大の村としても知られており、豊かな自然に恵まれた地で、まさに秘湯と呼ぶにふさわしい温泉地です。
この温泉は、標高の高い山々と美しい渓谷に囲まれた静寂の地にあり、日常の喧騒を忘れて心からリラックスできる場所として、多くの温泉愛好家や湯治客に親しまれています。
上湯温泉の泉質は、ナトリウム-炭酸水素塩泉(旧称:重曹泉)で、源泉温度は約76~85度と非常に高温です。湯は無色透明で、わずかに硫黄の香りが漂います。
この泉質は、肌をなめらかにする効果があり、いわゆる「美人の湯」として知られています。また、皮膚病やアトピー性皮膚炎、切り傷、火傷、疲労回復、神経痛など、さまざまな症状に効果があるとされています。
上湯温泉の最大の魅力は、100%源泉かけ流しであることです。季節によって加水調整が行われることはありますが、基本的には加温・循環なしの天然そのままの湯を楽しむことができます。さらに、飲泉も可能で、内臓の働きを助けるといった飲泉療法も注目されています。
神湯荘(かみゆそう)は、上湯温泉を代表する旅館で、上湯川沿いに位置しています。露天風呂からは清流のせせらぎを聞きながら、四季折々の自然美を堪能できる最高のロケーションが魅力です。
「日本秘湯を守る会」にも加盟しており、源泉かけ流しの温泉宿として全国から高い評価を受けています。宿泊だけでなく、日帰り入浴も可能で、気軽に上湯の湯を楽しめます。
さらに、自炊設備も整っており、長期滞在型の湯治宿としても親しまれています。まるで「温泉付きの別荘」のように、ゆったりとした時間を過ごせることが魅力です。
「河原の湯」は、2011年の台風12号による水害で一時閉鎖されましたが、2017年に露天風呂としてリニューアルオープンしました。かつては野湯として親しまれていた場所が整備され、より安全で快適に自然の中の湯浴みを楽しめる施設として生まれ変わりました。
かつては「出谷温泉公衆浴場つるつる乃湯」や民宿も営業していましたが、台風被害により現在は閉館しています。これらの歴史も、上湯温泉が地域に根差し、人々に愛されてきた証といえるでしょう。
上湯温泉の開湯は、江戸時代中期の享保年間(1716年~1736年)と伝えられています。地域の人々によって発見されたこの温泉は、長年にわたって多くの湯治客を迎え入れてきました。
1985年(昭和60年)3月19日には、十津川村内の他の温泉地である湯泉地温泉や十津川温泉とともに、「十津川温泉郷」として国民保養温泉地に指定され、健康増進や観光資源としての重要性が認められました。
2004年(平成16年)6月28日には、十津川村役場が「村内の温泉すべてを100%源泉かけ流し」とする宣言を行い、全国でも希少な「かけ流し文化」を村全体で守る取り組みが始まりました。
お車をご利用の場合は、国道168号線を通って、五條市や新宮市から十津川村へ向かいます。村内の平谷・蕨尾交差点からは、国道425号を経由して、奈良県道735号 龍神十津川線を進むと上湯温泉に到着します。
公共交通をご利用の際は、近鉄大和八木駅、JR五条駅、JR新宮駅から、奈良交通の「八木新宮線」または「十津川線」のバスに乗車し、「十津川温泉」停留所で下車。その後、十津川村営バスの「上湯川線」または「寺垣内線」に乗り換え、「小原口」停留所で下車します。
上湯温泉の近隣には、2004年に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道(熊野参詣道小辺路)」があります。温泉とともに歴史的な信仰の道を辿ることもでき、スピリチュアルな旅を求める方にもおすすめのエリアです。
上湯温泉は、秘湯ならではの静寂と自然美、そして確かな温泉効果を併せ持つ、知る人ぞ知る癒しのスポットです。豊かな泉質、歴史ある湯治文化、そして源泉かけ流しという贅沢な入浴体験を求めて、多くの人々が訪れています。
旅館「神湯荘」での宿泊や「河原の湯」での日帰り入浴を通じて、日々の疲れを癒し、心と体をリフレッシュする旅に出かけてみてはいかがでしょうか。