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玉置山

(たまきさん)

玉置山は、奈良県吉野郡十津川村に位置する標高1,076.4メートルの美しい山で、大峰山系の最南端にあたります。その地質は主に石英斑岩で構成されており、自然環境と人文的価値の両面から高い評価を受けています。

1986年には「森林浴の森100選」に、2007年には「日本の地質百選」に選定され、多方面で注目を集めている名峰です。

玉置山の地質と自然の成り立ち

地質的背景

玉置山は中央構造帯の南に位置し、紀伊山地に属する四万十帯に形成された山です。特にこの地域では、砂岩と泥岩が交互に重なる地層が見られ、北部では緑色岩や赤色泥岩も含まれています。

山頂付近では、枕状溶岩と呼ばれる海底火山の噴火によって形成された玄武岩質の岩が観察できます。この枕状溶岩は、海中で冷却・固化する過程で特有の袋状構造を呈し、その起源は中生代白亜紀に遡ることが分かっています。

豊かな植生と気候の関係

気候と植生の特徴

玉置山周辺は、太平洋の影響を強く受ける海洋性山岳気候と、内陸性気候が交錯する日本でも有数の多雨地帯です。そのため、非常に豊かな植物相が育まれています。

玉置山の植生帯

標高によって植物の分布が異なり、山地帯に分類される玉置山の頂上付近では、スギ・ヒノキ・モミ・ツガといった針葉樹と、ブナ・ミズナラ・アカシデなどの落葉広葉樹が混在した森林が見られます。

中腹では、ブナ林帯が広がり、ナナカマド、アセビ、ネジキ、タカノツメなどが分布。山麓では暖地性のアラカシ、ツクバネガシ、ヤブツバキ、シラカシなどが自生しています。

植物分布の表(高度別)
高度帯 標高 植物種
丘陵帯 100-500m アカマツ、クヌギ、コナラ、イヌツゲなど
低山帯 500-1000m スギ、ヒノキ、ブナへの移行帯
山地帯 1000-1600m ブナ、ミヤコザサ、スズタケなど

文化と信仰の山、玉置山

古来より続く信仰の地

海のない奈良県にありながら、山頂からは遥か熊野灘を望むことができるため、玉置山は別名「沖見岳」「舟見岳」とも呼ばれてきました。また、修験道においては「無漏岳(むろだけ)」とされ、精神修行の場としても知られています。

玉置神社とその歴史

山頂直下の九合目には、玉置神社が鎮座しており、悪霊を除ける「悪除童子」が祀られています。大峯奥駈道の「靡(なびき)」として、修験者たちが参拝する重要な霊場となっています。

かつては、神仏混淆の行場としても栄え、「高牟婁院」という別当寺があり、長い歴史の中で人々の信仰を集めてきました。

自然保護と文化財

玉置神社と自然環境保全

玉置山とその周辺、特に玉置神社の境内は、自然環境保全地域に指定されており、自然に影響を与えるような行為には厳しい制限が設けられています。

奈良県指定天然記念物「杉の巨樹群」

1959年には、玉置神社の境内に見られる壮大な杉の巨樹群が、奈良県指定天然記念物として登録されました。温暖多雨な気候と豊かな土壌により育まれた杉たちは、訪れる人々に圧倒的な存在感を与えます。

代表的な杉の巨樹
名称 幹周 樹高
神代杉(じんだいすぎ) 8.4m 28m
常立杉(とこたちすぎ) 10m 38m
磐余杉(いわれすぎ) 8.75m 40m
浦杉 7.8m 38m
大杉 10.3m 50m
玉置山の枕状溶岩堆積地

1997年には、玉置山の枕状溶岩堆積地が奈良県指定天然記念物に登録されました。海底火山の溶岩が冷却されてできたこの独特な地質は、長い地質活動を経て現在の山頂付近にまで隆起した貴重な自然遺産です。

まとめ

玉置山は、その自然の美しさ、豊かな生態系、信仰の歴史、そして貴重な地質遺産の全てを備えた稀有な存在です。森林浴や登山はもちろん、神社参拝や修験道の歴史探訪など、多様な楽しみ方ができる場所として、多くの人々を魅了しています。奈良県を訪れる際には、ぜひ一度、玉置山の頂を目指し、その深い魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

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