十津川温泉郷は、奈良県吉野郡十津川村に位置する自然豊かな温泉地です。この温泉郷は、「十津川温泉」「湯泉地温泉(とうせんじおんせん)」「上湯温泉(かみゆおんせん)」の三つの温泉地の総称で、いずれも日本の原風景ともいえる山あいの静かな地に湧く、極めて良質な温泉です。
1985年(昭和60年)には環境庁より国民保養温泉地に指定され、その後2004年(平成16年)には日本で初めて「源泉かけ流し宣言」を行ったことで、全国的にも注目を集めました。
2004年6月28日、十津川村は、村内すべての温泉施設が100%源泉かけ流しであることを宣言しました。これは、温泉を循環・再利用せず、加水・加温も行わず、塩素消毒も一切行わないというものです。浴槽には常に新鮮な源泉がこんこんと注がれ、自然のままの温泉が楽しめるのです。
このような試みが可能なのは、十津川村が持つ豊富な湯量と、温泉に対する深い敬意と情熱があってこそです。まさに、十津川温泉郷の温泉は「ほんまもんの温泉」といえるでしょう。
この宣言の背中を押したのは、温泉研究の第一人者である温泉教授・松田忠徳先生の一言でした。「なぜ、すべて源泉かけ流しにしないのか?」という問いかけに、村人たちは立ち上がり、村をあげて源泉かけ流しへの転換を決意したのです。
泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(70℃、pH7.9)
特徴:二津野ダム湖畔に位置し、十津川村内で最も旅館や商店が多く集まる活気ある温泉街です。飲泉も可能で、美肌効果にも優れています。
湖畔には旅館が6軒、温泉民宿が2軒あり、共同浴場も2つ、日帰り入浴施設も1つ設けられています。宿泊スタイルも多様で、目的や予算に合わせて選ぶことができます。
泉質:アルカリ性単純硫黄泉(60℃、pH9.1)
特徴:役行者によって発見されたと伝わる、村内で最も古い歴史を持つ温泉です。渓谷沿いに旅館や民宿が点在し、静かな山間の雰囲気を楽しめます。
柔らかい湯ざわりと硫黄の香りが心地よく、訪れる人々に癒しを与えてくれる名湯です。自然と一体となる感覚を味わえるロケーションも魅力です。
泉質:含硫黄ナトリウム-炭酸水素塩泉(85℃、pH7.7)
特徴:上湯川の上流に湧く秘湯で、まさに隠れた名所といえる温泉地です。大自然の中、川辺にある「大露天風呂」で日帰り入浴も可能です。宿は「神湯荘」一軒のみ。
まるで山と川に包まれるような空間の中、静かに湯に浸かるひとときは、都会では味わえない貴重な体験となることでしょう。
十津川温泉の源泉が発見されたのは元禄年間(1688年〜1704年)とされています。当初は「上湯温泉」に対して「下湯」と呼ばれていました。1974年に二津野ダムが完成した際、その湖畔である平谷地区まで源泉を引き、温泉街としての整備が進められました。
1985年には国民保養温泉地の指定を受けたことにより、三つの温泉地が一体的に紹介されるようになりました。そして2004年の「源泉かけ流し宣言」によって、十津川村全体の温泉品質が国内外に知られることになりました。
2019年には、和歌山県道・奈良県道735号の斜面崩落により温泉供給パイプが破損するというトラブルが発生しましたが、わずか1週間で復旧され、村の温泉への誇りと維持への努力が伺えます。
奈良県内の五條市、新宮市から国道168号線を経由してアクセス可能です。風光明媚な山道が続きますが、自然の景観を楽しみながらのドライブはおすすめです。
近鉄大和八木駅、JR五条駅、JR新宮駅などから奈良交通の路線バス(八木新宮線、十津川線)を利用し、「十津川温泉」停留所で下車してください。
十津川温泉郷は、豊かな自然とともに、誇り高き温泉文化を育んできた地です。「源泉かけ流し」という本物の温泉を求める方にとって、これ以上ない癒しの地と言えるでしょう。温泉の恵みと村人の情熱に触れながら、心も体もリフレッシュできる贅沢な旅を、ぜひ十津川村でお楽しみください。