国王神社は、奈良県吉野郡十津川村上野地に鎮座する神社で、十津川の大きな曲流によって形づくられた岬状の断崖の上に位置しています。川津集落の南西にあたり、眼下には雄大な十津川の流れが広がり、静寂と荘厳さをあわせ持つ特別な雰囲気に包まれています。旧村社に列せられ、古くから地域の人々の信仰を集めてきました。
国王神社の御祭神は、南北朝時代の第98代天皇である長慶天皇です。この神社は別名「南帝陵(なんていりょう)」とも呼ばれ、南朝ゆかりの地として知られています。伝承によれば、北朝勢に追われた長慶天皇は各地を転々としたのち、やがてこの地に関わる運命をたどったとされ、村人たちによってその御霊が丁重にお祀りされるようになったと伝えられています。
社伝によると、国王神社は文中元年(1372)に、長慶天皇の勅願によって創建されたとされています。その後、天皇そのものも祀られるようになり、神社の性格はより明確に南朝色を帯びるようになりました。境内には、長慶天皇にまつわる数々の伝説が語り継がれており、夜ごと川面に光が差したという不思議な逸話は、今も訪れる人の心を惹きつけます。
国王神社の例大祭は、毎年10月下旬から11月初旬にかけて行われ、現在も古式にのっとった厳かな神事が続けられています。中でも、上野地の集落から境内へと進む武者行列は見どころの一つで、直垂や裃に身を包んだ氏子たちが整然と練り歩く姿は、まるで中世に時代が戻ったかのような趣があります。
国王神社へは、JR和歌山線「五条」駅から十津川温泉・新宮方面行きのバスに乗車し、「上野地」バス停で下車後、徒歩約10分で到着します。駐車場付近からは「南帝陵」への案内もあり、急な坂道を進むと神社へと至ります。自然と歴史が調和したこの場所で、静かに手を合わせる時間は、十津川村観光の中でも心に残るひとときとなるでしょう。