吉野ロープウェイは、日本国内で現存する最も古い索道路線として知られています。吉野大峯ケーブル自動車株式会社によって運営されている旅客用のロープウェイで、正式名称は吉野山旅客索道です。
近鉄吉野駅から徒歩約3分。千本口駅は吉野山の玄関口に位置し、紅葉の名所としても知られています。秋には真っ赤に色づくもみじのトンネルが広がり、訪れる人々を魅了します。駅周辺にはお土産店や食堂もあり、観光の起点として賑わいを見せます。
山上に位置する吉野山駅は、索道の制御拠点でもあり、ここから吉野山内の観光スポットへのアクセスが便利です。
開業当初は20名乗りの搬器を使用していましたが、現在は3代目ゴンドラ「さくら」「かえで」の2台体制で運行中。両車とも近畿車輛によって製造されました。
かつてのカラーリングは近鉄特急をイメージしたものでしたが、2013年に一新され、「さくら」は白地に桜模様、「かえで」は白地に楓模様が施され、より吉野の自然と調和するデザインになっています。
現代のロープウェイでは珍しく、車内は階段状構造となっており、これは技術的課題が多かった建設当初の名残とされています。こうした構造も、索道の歴史を語る貴重な証です。
このロープウェイは、1929年(昭和4年)3月12日に開業しました。吉野駅までの鉄道が開業した翌年、内田政男氏と地元の有志により千本口駅から吉野山駅間で運行が開始されました。建設当時に設置された支柱は1928年(昭和3年)のもので、現在も使用されています。
多くの索道が戦時中の金属供出により撤去される中、このロープウェイは保存されました。その理由は、地域住民の足であるとともに、如意輪寺の後醍醐天皇塔尾陵への参拝手段として重要な役割を果たしていたためです。このような背景が、施設の維持に大きく寄与しました。
長年にわたり稼働し続けてきた技術の信頼性とその歴史的価値から、2012年に日本機械学会より機械遺産として認定されました。「当時の日本の材料力学・金属材料技術の優秀さを示す証」と評価されています。
2017年4月28日には、ゴンドラが駅施設に接触する事故が発生し、その後しばらくの間運休となりました。当初は簡易修理での再開を予定していましたが、ワイヤロープやゴンドラ部品の摩耗などが見つかり、修繕期間が大幅に延長されることとなりました。
資金不足により運行再開の目途が立たない状況も続きましたが、2019年3月23日に約2年ぶりに運転を再開。これに伴い、運賃も改定され、メンテナンス費用の捻出が図られました。
現在は、日・月・金・土・祝日にロープウェイ運行、それ以外は代行バスによる運行となっています。
吉野ロープウェイは、日本最古の旅客索道としてその歴史と技術的価値が高く評価されており、観光と地域交通の要として今なお重要な役割を果たしています。四季折々の自然と共に、歴史ある乗り物で吉野山の魅力を存分に堪能してみてはいかがでしょうか。