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三浦峠

(みうら とうげ)

熊野参詣道 小辺路の峠越え

三浦峠は、世界遺産「熊野参詣道小辺路(こへち)」に含まれる歴史ある峠の一つで、高野山と熊野三山を結ぶ巡礼路の途中に位置しています。標高は約1,070メートルと、小辺路の中でも重要な峠であり、古来より多くの参詣者や旅人がこの地を越えてきました。現在も当時の面影を色濃く残し、自然と歴史が調和した静かな山道が続いています。

三浦口から始まる峠越えの道

石畳と集落が残る登り口

三浦峠への登りは、三浦口から始まります。清流・神納川に架かる吊り橋を渡ると、民家の間を抜ける石畳の古道が現れ、熊野参詣道小辺路へと足を踏み入れます。周辺には棚田が広がり、どこか懐かしい日本の原風景が残されています。

道中には、茶屋跡や丁石、石仏が点在し、かつての旅の賑わいを静かに物語ります。地元の小学生が描いた案内板もあり、訪れる人の心を和ませてくれます。

巨木と湧き水に癒される山道

登りの途中にある吉村家跡防風林には、樹齢約500年、胴回り4~8メートルにも及ぶ大杉が立ち並び、その迫力に圧倒されます。また、「三十丁の水」と呼ばれる清らかな湧き水は、弘法大師が掘ったと伝えられ、昔も今も多くの旅人が喉を潤し、疲れを癒してきました。

三浦峠の歴史と見どころ

三浦峠は林道に横切られており眺望は開けませんが、峠周辺には茶屋や旅籠があったとされる平坦地が残っています。ここは、参詣者がひと息つき、再び険しい道へと向かう重要な場所でした。

峠を越えた後は比較的緩やかな下りとなり、古矢倉跡や出店跡、五輪の塔、矢倉観音堂などの史跡が点在します。樹林に包まれた静かな道は歩きやすく、巡礼路らしい厳かさを感じさせます。

南朝ゆかりの史跡「腰抜田」

峠道周辺の五百瀬地区には、南北朝時代の逸話が残る「腰抜田」の碑があります。これは、大塔宮護良親王がこの地を通過しようとした際に起きた出来事に由来するもので、当時の緊迫した歴史を今に伝えています。現在、腰抜田は明治の大水害によって埋没し、川底に眠っていますが、その物語は今も語り継がれています。

生活道としての熊野参詣道小辺路

熊野参詣道小辺路は、信仰の道であると同時に、地元の人々の生活を支えた道でもありました。近代まで車道が整備されていなかった時代には、高野山や大阪、熊野方面へ向かう重要な幹線路であり、商人の往来や通勤・通学にも利用されていました。現在でも林業に携わる人々が作業道として歩くことがあります。

峠越えの後は温泉でひと休み

三浦峠を越え、西中から国道425号を進むと、十津川温泉郷へと至ります。長い峠歩きの後は、源泉かけ流しの十津川温泉や上湯温泉で、心身ともに癒されるひとときを過ごすのがおすすめです。歴史と自然を体感した旅の締めくくりとして、格別の時間となるでしょう。

世界遺産・熊野参詣道小辺路の魅力

熊野参詣道小辺路は、高野山と熊野三山を最短距離で結ぶ巡礼路で、約70キロメートルの行程の中に1,000メートル級の峠を三度越える、最も険しい参詣道の一つです。良好な状態で残る石畳や、点在する史跡、雄大な自然景観は、往時の巡礼文化を今に伝えています。

三浦峠は、その中でも歴史・自然・信仰が重なり合う象徴的な場所であり、歩くことでこそ感じられる深い魅力に満ちています。

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三浦峠
(みうら とうげ)

吉野・天川村・十津川

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