柿博物館は、奈良県五條市西吉野町にある、柿に関するあらゆる情報を学ぶことができる公的施設です。正式名称は「奈良県果樹振興センター・柿博物館」。そのユニークな外観から「柿ドーム」とも親しまれています。
奈良県は全国有数の柿の産地であり、とくに五條・吉野地域を中心に広大な柿畑が広がっています。こうした地域特産の柿について、歴史や栽培方法、品種、加工品、さらには最新の研究成果まで幅広く紹介しているのがこの柿博物館です。
丘陵地の柿畑の中に、ひときわ目を引く丸いドーム型の建物があります。高さ約8.7メートル、直径約18.2メートル。三角形のアルミパネル236枚を組み合わせて、まるで本物の柿の実のような形に仕上げられています。
両側には柿の葉をイメージしたベンチが設けられ、写真撮影スポットとしても人気です。遠くから見ると、丘の上に大きな柿が実っているかのような、愛らしくも迫力のある景観を楽しむことができます。
館内では、柿の歴史や学名「Diospyros kaki(神様の食べ物)」の由来、栄養価、栽培方法、全国や世界の品種などをわかりやすく紹介しています。
「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるように、柿は栄養豊富な果実として古くから親しまれてきました。特にビタミンCは非常に豊富で、みかんの約2倍、レモンの約1.4倍含まれているといわれています。
館内には約50席の椅子が設けられ、大型スクリーンで柿に関する映像を鑑賞することができます。クイズ形式で楽しく学べるコーナーもあり、子どもから大人まで理解を深められる工夫がされています。
奈良県の柿栽培面積は約1,810ヘクタール(2019年)におよび、生産額は全国第2位を誇ります。7~8月のハウス柿に始まり、「刀根早生」「平核無」「富有」「松本早生富有」など、長期間にわたり全国へ出荷されています。
秋には、果樹・薬草研究センターで栽培されている約200品種の柿の実物が展示されます。2センチほどの小さな「豆柿」や、皮が黒い「黒柿」など、普段目にすることのない珍しい品種も見ることができます。
さらに、柿は食べるだけではありません。館内では、柿ワイン、柿酢、柿ようかん、柿ジャム、柿バターなどの加工品や、郷土料理の柿の葉寿司も紹介されています。柿の可能性の広さを実感できる展示内容です。
柿の渋み成分であるタンニンは「柿渋」として古くから利用されてきました。抗菌作用や防水・防腐効果があり、染め物や和紙、生活用品などに幅広く活用されています。
館内では柿渋染め製品も展示されており、独特の風合いや日本の伝統文化に触れることができます。柿は果実としてだけでなく、生活文化を支えてきた存在であることがわかります。
柿博物館は1994年(平成6年)、奈良県果樹振興センターの施設として開設されました。国営五条吉野総合農地開発事業の一環として整備され、地域の強い要望により誕生しました。
開館以来、多くの小学生や観光客が訪れ、地域学習や社会教育の場として活用されています。開館30周年を迎えた2024年には累計来館者数が30万人を突破し、奈良の柿文化を発信する拠点施設として定着しています。
所在地:奈良県五條市西吉野町湯塩1345
入館料:無料
JR和歌山線五条駅から車で約15分、京奈和自動車道五條ICから約7km、車で約20分の場所に位置しています。
五條市を訪れた際には、ぜひこの巨大な柿ドームを目印に足を運んでみてください。身近な果実でありながら奥深い魅力を持つ柿の世界を、楽しく学びながら体感できる施設です。