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長岳寺

(ちょうがくじ)

四季折々の花が美しく咲く釜口のお大師さん

花と歴史に包まれた古代日本の歴史を感じさせる名刹

長岳寺は、奈良県天理市柳本町の東方、釜口山(かまのくちさん)の麓に広がる高野山真言宗の古刹です。山号は釜の口山、本尊は阿弥陀如来。古くから「釜口のお大師さん」の名で親しまれ、四季折々の花と数多くの文化財を有する名寺として、多くの参拝者や観光客を迎えてきました。日本最古の歴史道といわれる山の辺の道のほぼ中間点に位置し、古代大和の風景と信仰の歴史を体感できる場所としても知られています。

長岳寺の成り立ちと由緒

空海(弘法大師)による創建

長岳寺の創建は、天長元年(824年)。第53代淳和天皇の勅願により、空海(弘法大師)が大和神社の神宮寺として開いたと伝えられています。釜口氏の廟所に精舎を建て、真言密教の道場としたのが始まりで、『長岳寺金剛身院旧記』や『伽藍開基記』などの史料にもその由緒が記されています。

中世から近世へ ― 栄枯盛衰の歴史

中世には広大な寺領を誇り、最盛期には48もの塔頭が立ち並ぶ大寺院でした。鎌倉時代には興福寺大乗院の末寺となり、室町時代には柳本氏の外護を受けて繁栄します。しかし、応仁の乱や文亀3年(1503年)の兵火により多くの堂宇が焼失し、寺勢は大きく衰退しました。

その後、慶長7年(1602年)に徳川家康の支援を受けて復興が進み、江戸時代には再び寺観が整えられました。明治期の廃仏毀釈により塔頭は失われましたが、現在も往時を偲ばせる建造物や石仏が境内に残されています。

四季を彩る花の寺

長岳寺は「花の寺」としても知られ、境内12,000坪に咲く約1,000本の平戸つつじは圧巻です。また、いろはもみじやノムラもみじなどの紅葉も美しく、全国紅葉100選にも選ばれています。

平戸つつじと初夏の彩り

長岳寺は「関西花の寺二十五霊場」第19番札所としても知られ、花の名所として名高い寺院です。特に4月下旬から5月上旬にかけて境内一帯を彩る平戸つつじは圧巻で、参道や庭園を鮮やかな紅色に染め上げます。

かきつばたと水辺の風景

5月中旬から下旬にかけては、本堂前の池にかきつばたが咲き誇ります。静かな水面に映る紫の花影は、訪れる人の心を和ませ、浄土を思わせる景観をつくり出します。

紅葉と歌に詠まれた秋景色

秋には境内の木々が鮮やかに色づき、古くから和歌にも詠まれてきた紅葉の名所として知られています。石仏や古建築と紅葉が織りなす風景は、長岳寺ならではの趣深さを感じさせます。

境内の見どころ

境内の面積は約40,000平方メートルを誇り、新四国八十八箇所石仏道が竜王山中腹の奥の院まで続いています。自然豊かな環境と歴史が調和した空間です。

楼門(鐘楼門)― 日本最古級の鐘門

楼門(重要文化財)は、長岳寺創建当初からの遺構と伝えられる、日本最古級の鐘楼門です。下層は鎌倉から室町時代の様式、上層は平安時代末期の建築とされ、楼門と鐘楼を兼ねる極めて珍しい構造を持っています。

本堂と仏像

現在の本堂は天明3年(1783年)に再建されたもので、阿弥陀三尊像と多聞天・増長天立像を安置しています。阿弥陀三尊像は、平安時代末期の仁平元年(1151年)の作で、玉眼(ぎょくがん)技法を用いた最古の例として知られています。また、多聞天・増長天立像は平安時代中期の作で、元は大神神社の神宮寺である大御輪寺の仏像でしたが、明治時代の廃仏毀釈により長岳寺に移されました。

延命殿

現在の本堂は天明3年(1783年)再建。堂内には本尊の阿弥陀三尊像をはじめ、多聞天・増長天立像が安置されています。延命殿(重要文化財)は江戸初期の宝形造で、端正な姿が印象的です。

五智堂(ごちどう)

五智堂は、境内から数百メートル離れた場所に建つ鎌倉時代の建造物で、国の重要文化財に指定されています。方一間の小規模な建物で、中央の心柱の上部に四仏の種子を表し、心柱を大日如来に見立て、全体で五智如来を表現しています。その形状から「傘堂」や「真面堂(まめんどう)」の別称があります。

庫裏

庫裏(重要文化財)は寛永8年(1631年)築で、室町時代の書院造の様式を伝えています。内部では名物の三輪そうめんを味わうことができ、参拝後の楽しみとして親しまれています。

旧地蔵院と延命殿

かつて48坊あった塔頭の中で唯一現存するのが旧地蔵院で、その本堂である延命殿は国の重要文化財に指定されています。また、庫裏(くり)も寛永8年(1631年)築で、室町時代の書院造の様式を伝える重要文化財です。

庭園と石仏群

境内には池を中心とした浄土式庭園や池泉鑑賞式庭園が広がり、四季折々の花々が訪れる人々を楽しませます。また、鎌倉時代から江戸時代にかけての石仏が数多く点在し、特に高さ2mの大石棺仏は見応えがあります。特に初夏の紫陽花と石仏のコントラストは圧巻です。

主な建造物と史跡

仏像と石仏 ― 信仰のかたち

阿弥陀三尊像 ― 最古の玉眼仏

本尊の木造阿弥陀三尊像(重要文化財)は、仁平元年(1151年)の作。像の眼に水晶を嵌め込む玉眼技法を用いた仏像として、日本最古の作例として知られています。堂々とした量感と写実的な表現は、次代の鎌倉彫刻を先取りするものと評価されています。

石仏群と大石棺仏

境内には鎌倉時代から江戸時代にかけて造立された石仏が数多く点在し、古墳の石材を利用した高さ約2メートルの大石棺仏も見どころの一つです。八十八箇所石仏道をたどる巡礼路は、心静かに歩ける信仰の道となっています。

大地獄絵図と絵解き説法

秋には、安土桃山時代に狩野山楽が描いた大地獄絵図が開帳されます。9幅構成、横約11メートル・縦約4メートルに及ぶ壮大な作品で、その迫力と精緻な描写は他に類を見ません。住職による絵解き説法「閻魔のなげき」も行われ、仏教の教えをわかりやすく伝えています。

文化財と仏教美術

重要文化財

長岳寺には、以下の建造物や仏像が国の重要文化財に指定されています:

奈良県指定有形文化財

奈良県指定有形文化財として、大師堂や刺繍阿弥陀如来立像、黒漆彩色華形大壇、紙本著色六道絵(極楽地獄図)などがあります。特に、紙本著色六道絵は約400年前の安土桃山時代に狩野山楽が描いた9幅構成の地獄図で、精緻な図柄と描写が特徴です。

天理市指定有形文化財

天理市指定有形文化財として、絹本著色仏涅槃図が指定されています。

年間行事

寺の名物と体験

長岳寺では、庫裏で供される寺料理「そうめん」が名物として親しまれています。参拝とともに静かなひとときを過ごせる体験は、訪れる人々に深い癒しを与えます。

巡礼と霊場としての長岳寺

長岳寺は、関西花の寺二十五霊場大和十三仏霊場大和北部八十八ヶ所霊場など、複数の霊場に属する重要な札所です。巡礼の拠点として、多くの参拝者が訪れています。

アクセスと参拝案内

JR桜井線柳本駅下車、東へ徒歩約20分。山の辺の道を歩きながら訪れるのもおすすめです。四季の花、歴史的建築、貴重な文化財が調和する長岳寺は、心を静め、日本の古層文化に触れることができる特別な場所です。

おわりに

長岳寺は、千年以上の歴史を刻む信仰の場であると同時に、花と文化財に彩られた癒やしの空間です。四季折々に異なる表情を見せる境内を歩けば、古代から現代へと続く大和の時間の流れを、静かに感じ取ることができるでしょう。

Information

名称
長岳寺
(ちょうがくじ)
リンク
公式サイト
住所
奈良県天理市柳本町508
電話番号
0743-66-1051
営業時間

9:00~17:00

定休日

年中無休

料金

拝観料
大人 400円
大学生・高校生 350円
中学生 300円
小学生 250円

駐車場
30台 無料
アクセス

JR・近鉄桜井駅から天理駅行きバス「上長岡(かみなんか)・長岳寺前」下車、徒歩約6分

JR柳本駅から徒歩約20分

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