平群町は、奈良県西北部、生駒郡に属する町で、大阪府との県境に近い位置にあります。 西に生駒山地・信貴山、東に矢田丘陵を望む山あいの小平野に町が広がり、中央部を竜田川が北から南へと流れています。 この竜田川はやがて大和川に合流し、古くから人々の暮らしと文化を育んできました。
『古事記』『日本書紀』『万葉集』にも「たたみこも平群の山」と詠まれたこの地は、緑深い山々に囲まれた風光明媚な土地であり、 古代から中世、近世、そして現代に至るまで、日本史の重要な舞台として歩みを重ねてきました。
平群町は、生駒山系と矢田丘陵に挟まれた盆地状の地形を持ち、四季折々の自然の変化を身近に感じられる環境にあります。 春には山麓や集落を彩る桜や桃、夏には深い緑、秋には紅葉、冬には澄んだ空気と静寂が町全体を包み込みます。
竜田川沿いの風景は特に美しく、古来より歌枕として知られ、多くの和歌に詠まれてきました。 現在も散策路やウォーキングコースが整備され、歴史と自然を同時に楽しめる場所として親しまれています。
平群町は、古代の大和国平群郡平群郷にあたり、古代豪族平群氏の本拠地として知られています。 町内には平群神社、平群坐紀氏神社、平群石床神社などの延喜式内社が鎮座し、 古代信仰の中心地であったことを今に伝えています。
また、町内には64基以上の古墳が点在しており、古墳時代における有力な勢力の存在を物語っています。 前方後円墳から円墳まで多様な形態の古墳が残されており、古代史ファンにとっても見逃せない地域です。
中世後期、平群町は大和国の政治・軍事の要衝として重要な役割を担いました。 1536年(天文5年)、木沢長政が信貴山城を築城し、その後、松永久秀がこれを補修して居城としました。
信貴山城は大和と河内を結ぶ要地に位置し、山全体を要塞化した大規模な山城でした。 久秀の滅亡後、城は廃城となりましたが、現在も城跡は町指定史跡として保存され、 当時の緊迫した戦国時代の空気を感じることができます。
平群町を代表する観光名所が、信貴山朝護孫子寺(しぎさんちょうごそんしじ)です。 聖徳太子が戦勝祈願を行い、毘沙門天から必勝の法を授かったという伝承を持つ寺院で、 現在は毘沙門天王信仰の総本山として全国から多くの参拝者が訪れます。
境内には巨大な張り子の虎「世界一の福寅」をはじめ、寅をモチーフとした奉納物が並び、 信仰と観光が融合した独特の空間を形成しています。
朝護孫子寺の霊宝館には、国宝『信貴山縁起絵巻』(複製)が展示されています。 この絵巻は平安時代の説話を描いたもので、日本絵巻物の最高傑作の一つとされています。
本堂(毘沙門堂)は舞台造りの懸造建築で、大和平野を一望できる眺望も魅力のひとつです。 秘仏である毘沙門天像は、特定の時期のみ開帳され、多くの信仰を集めています。
元山上千光寺は、役行者が大峰山へ入峯する以前に修行した地と伝えられ、 日本の修験道史において重要な位置を占める寺院です。 千手観音菩薩を本尊とし、現在も静かな修行の場として多くの参拝者を迎えています。
平群町には、60基以上の古墳が点在しており、 この密度は奈良県内でも有数です。 これらの古墳は、古代豪族・平群氏をはじめとする 地域の有力者たちの存在と、この地の重要性を今に伝えています。
町内でも特に知られているのが、 悲劇の皇子として知られる長屋王と、 その妃である吉備内親王の墓です。 政争の果てに非業の死を遂げた長屋王の物語は、 日本史において象徴的な出来事のひとつであり、 静かな墳墓の佇まいは訪れる人に深い余韻を残します。
烏土塚古墳は、平群町最大規模の前方後円墳で、 国の史跡にも指定されています。 古墳の規模や構造から、この地域が 古墳時代において政治的・軍事的にも重要であったことがうかがえます。
整備された史跡公園として公開されており、 古代史に詳しくない人でも、実際に墳丘に立つことで、 はるか昔の権力と信仰を肌で感じることができます。
平群町を語るうえで欠かせないのが、 十三街道(じゅうさんかいどう)と呼ばれる古道です。 この街道は、大和国と河内国を結ぶ重要な交通路であり、 古代から中世にかけて人と文化が行き交いました。
十三街道は、平安時代の歌人在原業平ゆかりの道としても知られ、 「業平ロマンの道」として整備されています。 周辺には万葉集や古今和歌集に詠まれた地名が点在し、 文学と歴史が重なり合う風景を楽しむことができます。
この街道沿いには、小規模な円墳や古民家、田畑の風景が続き、 現在ではウォーキングコースとしても人気があります。 春には桃や桜、夏には緑陰、秋には紅葉と、 季節ごとに異なる表情を見せる点も魅力です。
平群町は、古代から続く歴史の町であると同時に、 現在も農業と共に生きる町です。 町内では、小菊、バラ、ブドウ、イチゴなどの栽培が盛んで、 山麓から平野部にかけて、美しい農の景観が広がります。
特に奈良県品種のイチゴ「古都華」(ことか)は、色艶・香り・味わいの三拍子が揃った高級ブランドとして高い評価を受けています。
特に小菊の生産量は全国有数を誇り、 市場や祭事を通じて全国へ出荷されています。 花に囲まれた風景は、平群町ならではの穏やかな観光資源であり、 歴史探訪の合間に心を和ませてくれます。
平群町には、長屋王墓・吉備内親王墓、国史跡である烏土塚古墳、 西宮古墳など、重要な墳墓・史跡が点在しています。
これらの史跡を結ぶ散策路は「十三街道と業平ロマンの道」として整備され、 在原業平ゆかりの伝承とともに、のどかな里山風景を楽しみながら歩くことができます。
国道168号線沿いに位置する道の駅 大和路へぐり・くまがしステーションは、 平群町観光の拠点です。 地元農産物の直売所やレストラン、観光案内機能を備え、週末には多くの来訪者で賑わいます。
古都華を使ったスイーツや、地元食材を活かした料理も人気で、 平群町の「食」と「人」に触れられる場所となっています。
信貴生駒スカイラインは、平群町と生駒市を結ぶ観光道路で、山上からは奈良盆地や大阪平野を一望できる絶景スポットとして人気です。夜景の美しさも格別で、デートスポットとしても親しまれています。
平群町は、信貴山という霊峰を起点に、古代豪族の足跡、戦国の城跡、修験道の聖地、そして豊かな自然と農業が調和した町です。 自然の中で祈り、歴史を歩き、土地の恵みを味わう――。 平群町は、訪れる人に「時間の流れ」を体感させてくれる、 奥深い観光地といえるでしょう。