柳沢文庫は、奈良県大和郡山市に位置し、かつてこの地を治めていた郡山藩主・柳沢氏にまつわる歴史的資料を中心に収蔵・公開している図書館です。昭和35年(1960年)の開設以来、地元の歴史や文化の継承と発信を目的として、多くの貴重な文献や古文書を保管し、一般に開かれた施設として親しまれています。
柳沢文庫は、昭和35年秋に発足した「郡山城史跡・柳沢文庫保存会」によって創設されました。この保存会は、最後の郡山藩主・柳沢保申(やすのぶ)の長男である柳沢保承(やすつぐ)を中心とした有志により結成され、郷土教育の発展と歴史文化の保存を目的として活動してきました。
柳沢文庫の建物は、明治時代に建設された旧柳沢邸を活用したもので、歴史ある外観と重厚な趣が訪れる者を魅了します。この施設は郡山城の一角、毘沙門曲輪に位置し、静かな環境の中で貴重な資料とじっくり向き合うことができます。
柳沢文庫には、郡山藩主であった柳沢家から寄贈された数々の古文書・古典籍が所蔵されています。中でも、徳川綱吉の側用人として知られる柳沢吉保に関する一代記『楽只堂年録』は特に貴重な資料です。そのほかにも、和歌や俳諧、書画、藩政に関する文書など、多岐にわたる資料が保管されています。
柳沢家が大和郡山に移封される前の、甲斐国(現在の山梨県)甲府藩時代の文書も多く収蔵されています。これにより、柳沢氏の歴史を時代と場所を超えて一貫して学ぶことができ、研究者にとっても大変貴重な情報源となっています。
柳沢家に関連する資料に加え、奈良県内の歴史・文学関係書籍、郷土の自治体史なども広く収蔵されており、一般の来館者にも親しみやすい内容となっています。定期的に行われる企画展示や公開講座「柳沢文庫歴史塾(郡山学)」などを通じて、地域の歴史教育にも貢献しています。
開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日、祝日など(詳細は事前に公式情報をご確認ください)
JR大和路線「郡山駅」より徒歩15分。歴史ある城下町を歩きながらの道のりも、旅の一興として楽しめます。
柳沢氏は、甲斐源氏の流れをくむ甲斐一条氏の支流、青木氏の末裔とされています。戦国時代には武田信玄をはじめとする甲斐武田氏に仕え、武川衆という武士団の一員として活躍しました。
江戸時代に入り、特に名を馳せたのが柳沢吉保です。彼は5代将軍・徳川綱吉の側用人として幕政に強い影響力を持ち、川越藩主を経て甲府藩15万石の大名に昇格しました。また、老中格や大老格といった高位に就任し、当時の政治を大きく動かした人物でもあります。
綱吉の死後、吉保は政界を退き、家督を嫡男の吉里に譲りました。享保9年(1724年)、幕府の政策により甲府藩は幕府直轄領となり、吉里は大和国郡山藩へ転封されます。これにより、柳沢家は奈良の地に根を下ろし、現在の柳沢文庫へとつながる郷土の歴史が築かれました。
明治維新後、最後の藩主である柳沢保申は早くから新政府に恭順の意を示し、松平姓を返上して柳沢姓に復しました。その後、華族制度が成立すると、郡山藩主であった保申は伯爵に叙され、黒川藩・三日市藩の分家も子爵として華族に列しました。
柳沢文庫は、単なる図書館ではなく、大和郡山という城下町の文化と歴史を深く感じられる貴重な観光スポットです。郡山城跡や町の散策とあわせて訪れることで、歴史の流れを肌で感じることができるでしょう。
年に3回開催される展示会や、地域史を学べる「柳沢文庫歴史塾」は、観光客だけでなく地元の方々にも大変好評です。初心者から研究者まで、幅広い層に向けて開かれたプログラムが用意されています。
静かで落ち着いた雰囲気の中、ゆっくりと資料に触れ、かつての時代に思いを馳せることができる柳沢文庫。歴史好きの方はもちろん、旅先で少し知的なひとときを過ごしたい方にもおすすめです。