奈良県宇陀市榛原赤埴(はいばらあかばね)の山間にひっそりと佇む「仏隆寺(佛立寺)」は、真言宗室生寺派に属する歴史ある寺院です。摩尼山(まにさん)という山号を持ち、本尊には十一面観音が祀られています。静かな山里に位置しながらも、春には桜、秋には彼岸花と、四季折々の自然美に包まれ、多くの参拝者を魅了しています。
仏隆寺は、古来より「室生寺の南門」とも称される存在で、室生寺との本寺・末寺関係にあります。そのため、宗派も同じく真言宗室生寺派に属しています。
また、弘法大師・空海が唐から持ち帰ったとされる茶を日本で初めて栽培した地とも伝えられており、「大和茶発祥の地」として知られています。境内には、空海が使用したと伝わる石製の茶臼が残され、歴史の重みを感じさせてくれます。
毎年4月上旬、仏隆寺の参道沿いに咲く「千年桜」が見頃を迎えます。この桜は奈良県最古の桜とも言われ、推定樹齢は900年を超えるとされており、1978年には奈良県の天然記念物にも指定されました。以前は「ヤマザクラ」と考えられていましたが、後の調査により「モチヅキザクラ」というヤマザクラとエドヒガンの雑種であることが判明しています。
春の境内は、千年桜の淡いピンク色に包まれ、訪れる人々に感動を与えてくれます。
彼岸の季節には、197段の石段の両脇を彩るように、ヒガンバナが咲き誇ります。かつては関西でも屈指の彼岸花の名所として知られていましたが、2010年以降、野生動物、特にシカやイノシシによる食害のため、花はほとんど姿を消してしまいました。
しかし2015年にはボランティアの尽力により食害対策の柵が設置され、再び球根の植え付けが進められています。現在では少しずつ花が復活しつつあり、かつての美しい光景を取り戻す日も近いと期待されています。
仏隆寺の創建は平安時代前期、嘉祥3年(850年)に空海の高弟である堅恵(けんね)によってなされたと伝わっています。また、別の説では奈良の興福寺の僧・修円が創建したとも言われており、古くからの由緒ある寺院であることは間違いありません。
この地は古来より修行の場としても知られ、静寂な山の中で精神を研ぎ澄ます場所として、多くの僧侶が訪れた歴史があります。
仏隆寺の本堂は、長く急な197段の石段を登った先にあります。本尊として祀られているのは、聖徳太子の作と伝えられる十一面観音立像であり、長い歴史を感じさせる佇まいです。
石室は国の重要文化財に指定されている建造物で、その内部には堅恵の墓とされる五輪塔が安置されています。苔むした石造建築からは、悠久の時の流れを感じることができます。
境内には元徳2年(1330年)銘のある「十三重石塔」があります。この石塔もまた、仏隆寺の長い歴史と文化的価値を物語る貴重な遺構です。
再度強調されるべきは、やはり「千年桜」です。その歴史的・文化的価値から、奈良県の天然記念物に指定されており、春には多くの観光客が訪れます。
境内には、空海が唐から持ち帰ったと伝わる石製の茶臼が保存されており、仏隆寺が日本茶の発祥地であることを今に伝えています。
仏隆寺へのアクセスは、近鉄大阪線「榛原駅」から奈良交通バス(上内牧・曽爾村役場前行き)に乗車し、「高井」バス停で下車。その後、徒歩で約30分の道のりとなります。自然豊かな山道を歩くため、歩きやすい靴や服装での訪問をおすすめします。
仏隆寺は、その長い歴史と豊かな自然が共存する奈良の隠れた名刹です。千年桜の壮麗な姿や、往時の修行僧の息吹が感じられる石室など、訪れるたびに新たな発見と心の癒やしをもたらしてくれます。静けさと厳かさに満ちた仏隆寺で、古の日本と向き合うひとときをぜひお過ごしください。