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阿紀神社

(あき じんじゃ)

悠久の歴史を伝える「元伊勢」の古社

阿紀神社は、奈良県宇陀市大宇陀迫間に鎮座する由緒ある神社です。式内社として古くから朝廷の崇敬を受け、明治時代には県社に列格しました。通称「神戸明神」とも呼ばれ、地域の人々に親しまれています。杉木立に囲まれた静かな境内には、格式高い神明造の本殿や、現在では大変貴重となった能舞台が残り、歴史と文化の趣を今に伝えています。

「元伊勢」としての由緒

阿紀神社は「元伊勢」の一社として知られています。『日本書紀』によれば、垂仁天皇の皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)が、天照大神の鎮座地を求めて各地を巡行したと伝えられています。その際に祀られた場所のひとつが「宇太乃阿貴宮(うだのあきのみや)」であり、これが阿紀神社の起こりとされています。

平安時代の『皇太神宮儀式帳』や鎌倉時代の『倭姫命世紀』にもその名が見え、古くから天照大神ゆかりの聖地として信仰されてきました。遥か古代の伝承が重なるこの地は、記紀や万葉の世界とも深く結びついています。

阿騎野と歴史の舞台

神社が鎮座する一帯は、古代には「阿騎野(あきの)」と呼ばれました。万葉集では柿本人麻呂の歌にも詠まれ、風光明媚な地として知られていました。また、推古天皇19年(611年)には薬猟が行われたと『日本書紀』に記されており、鹿の角や薬草を採取する宮中行事が催されたことが伝えられています。

さらに、壬申の乱の際には、大海人皇子(後の天武天皇)が立ち寄った地ともされ、歴史の転換点を見守ってきた場所でもあります。

格式高い神明造の社殿

境内の本殿は、伊勢神宮と同じ様式である神明造(しんめいづくり)で建てられています。主祭神は天照皇大神をはじめ、秋田比売神、邇邇杵命、八意思兼神などが祀られています。相殿には菅原道真公や金山彦神なども祀られ、多彩な神々が鎮座しています。

創建は神代にさかのぼると伝えられ、崇神天皇の勅により「神戸大神宮」の号を賜りました。安土桃山時代に現在地へ遷座し、現在の社名となりました。

幽玄の美「あきの蛍能」

境内に残る能舞台は、江戸時代前期に建てられたものです。かつては寛文年間から大正時代末期まで能が盛んに演じられていました。平成に入り薪能が再開され、現在では毎年6月中旬に「あきの蛍能」が開催されています。

能の終盤には数百匹もの蛍が放たれ、闇夜に舞う光が幽玄の世界を演出します。古社の静寂と能楽、そして蛍の幻想的な輝きが調和するひとときは、多くの人々を魅了しています。

境内の見どころとアクセス

境内には本殿のほか、神門、社務所、瑞籠、境内社などが整えられています。杉木立に囲まれた参道は清らかな空気に満ち、心静かに参拝することができます。

アクセスは、近鉄榛原駅より「大宇陀」行きのバスに乗車し、「大宇陀高校」下車、徒歩約10分です。宇陀の豊かな自然と歴史に包まれた阿紀神社は、古代から続く信仰と文化を感じられる貴重な観光スポットです。

Information

名称
阿紀神社
(あき じんじゃ)

明日香・橿原

奈良県