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飛鳥資料館

(あすか しりょうかん)

飛鳥資料館は、奈良県高市郡明日香村に所在する、日本の古代史研究を代表する文化施設です。奈良文化財研究所の附属機関として設置され、日本人の心のふるさととも称される「飛鳥」の歴史と文化を、考古学的成果に基づいて分かりやすく紹介しています。1975年(昭和50年)に開館して以来、飛鳥時代の政治・文化・信仰・技術を総合的に学べる資料館として、多くの来館者を迎えてきました。

飛鳥の地が持つ歴史的意義

飛鳥は、日本の古代国家が形づくられた極めて重要な地域です。592年に推古天皇が豊浦宮で即位してから、694年に藤原京へ遷都されるまでのおよそ100年間、飛鳥は天皇の宮殿が連続して置かれた政治・文化の中心地でした。この時代、日本では仏教の受容、律令制度の形成、国際交流の進展など、国家としての基礎が急速に整えられていきます。

壮麗な宮殿や寺院、時を刻む水時計(漏刻)、猿石や亀石に代表される謎多き石造物、精巧な石組みの苑池や噴水施設、色鮮やかな壁画古墳など、飛鳥には当時の最先端技術と思想が結集していました。これらは東アジアの緊迫した国際情勢のなかで、人や文物の交流を通じて飛鳥にもたらされたものであり、日本文化の原点を今に伝えています。

飛鳥資料館の設立と建築

1970年(昭和45年)12月18日の閣議において、飛鳥地域から出土した貴重な文化財を保管・展示するための施設建設が決定されました。設計は、日本を代表する建築家である谷口吉郎が担当し、数寄屋風の意匠を取り入れた鉄筋コンクリート造の建築が完成しました。

周囲の田園風景や歴史的景観と調和する落ち着いた佇まいは、訪れる人々に静かな時間を提供します。1975年3月16日の開館以降、飛鳥資料館は研究成果の発信拠点として、また飛鳥観光の中核施設として重要な役割を担っています。

ロビー展示と導入空間

館内に足を踏み入れると、まずロビーで来館者を迎えるのが、飛鳥時代の噴水施設や石人像の実物です。これらは、飛鳥の人々が水や石に特別な意味を見出していたことを今に伝えています。

正面には、500分の1の縮尺で再現された飛鳥地域全体の復原模型と航空写真が設置されており、古代と現代の飛鳥を一望することができます。展示室を巡る前に、この模型を見ることで、遺跡の位置関係や地形の特徴を直感的に理解でき、展示内容への理解が一層深まります。

第一展示室:飛鳥の歴史と文化

第一展示室では、日本に仏教が伝来した6世紀から、都が平城京へ移る8世紀初頭までの飛鳥の歴史と文化を、体系的に紹介しています。展示は次の六つのコーナーで構成されています。

仏教伝来と蘇我氏

このコーナーでは、仏教受容の過程と、それを主導した蘇我氏の役割を解説しています。仏像や瓦、寺院跡の出土品などから、当時の信仰と政治の密接な関係を学ぶことができます。

飛鳥の宮殿

飛鳥に営まれた宮殿跡の調査成果をもとに、建築技術や宮廷生活の様子を模型や図面で紹介しています。宮殿が単なる住居ではなく、国家運営の中枢であったことがよく分かります。

律令国家への歩み

大化の改新を経て、中央集権国家が形成されていく過程を、木簡や行政関連の出土資料を通じて解説しています。日本国家成立の道筋を理解する上で欠かせない展示です。

よみがえる飛鳥の工房

土器や瓦、金属製品の製作に関わる工房跡の資料から、当時の技術力や職人たちの営みを紹介しています。飛鳥が高度な生産技術を持つ地域であったことが伝わります。

飛鳥の古墳

高松塚古墳をはじめとする古墳の出土遺物や壁画の再現展示により、飛鳥時代の葬送文化や美意識を知ることができます。

飛鳥の寺院

飛鳥寺や川原寺など、日本最初期の本格的寺院に関する模型や出土品を展示し、仏教建築の始まりを分かりやすく解説しています。

第二展示室:山田寺の復原展示

第二展示室では、蘇我倉山田石川麻呂の発願により641年に建立が始まった山田寺に焦点を当てています。1982年の発掘調査で、東回廊が倒れた状態のまま地中から発見され、大きな注目を集めました。

山田寺東回廊の部材は、現存する世界最古の木造建築である法隆寺金堂よりも古い、7世紀中頃のものとされます。展示室では、保存状態の良かった柱間三間分を用いて、当時の姿を忠実に復原しています。

1000年以上地中に眠っていた木材は非常に脆弱であり、保存処理には14年もの歳月が費やされました。この貴重な建築部材は、2007年に国の重要文化財に指定され、日本建築史を考える上で欠かせない存在となっています。

重要文化財と見どころ

飛鳥資料館には、多くの国指定重要文化財が収蔵・展示されています。代表的なものとして、石造須弥山や石造男女像、高松塚古墳出土品、奈良県山田寺跡出土品などが挙げられます。いずれも飛鳥時代の精神文化や技術水準を今に伝える第一級の資料です。

アクセスと観光の拠点として

飛鳥資料館は、明日香村観光の拠点としても非常に便利な場所にあります。近鉄橿原神宮前駅・飛鳥駅からは明日香周遊バス「赤かめ」が運行されており、「飛鳥資料館西」バス停で下車すればすぐです。また、近鉄・JR桜井駅からも奈良交通バスが利用できます。

資料館を起点に、飛鳥寺や石舞台古墳、甘樫丘などを巡ることで、展示で得た知識を実際の遺跡と結び付けて体感することができます。飛鳥資料館は、単なる展示施設にとどまらず、飛鳥の歴史を深く理解するための知的な旅の出発点として、多くの人におすすめできる場所です。

Information

名称
飛鳥資料館
(あすか しりょうかん)

明日香・橿原

奈良県