鴨都波神社は、奈良県御所市に鎮座する由緒ある神社で、延喜式内社の中でも特に格式の高い名神大社に列せられています。旧社格は県社で、古来より高鴨神社(上鴨社)、葛城御歳神社(中鴨社)と並び、「下鴨社」と称されてきました。葛城川と柳田川が合流する水豊かな地に位置し、古代から人々の営みと深く結びついてきた神聖な場所です。
鴨都波神社は、第10代崇神天皇の時代に勢力を誇った大豪族鴨氏の氏神として創建されたと伝えられています。鴨氏は農耕や水利に深く関わる氏族であり、その信仰は各地に広がり、現在全国に点在する鴨(加茂)神社の源流の一つとされています。
神社一帯は「鴨都波遺跡」と呼ばれる弥生時代の大規模遺跡で、土器や石器、農具、住居跡などが多数発見されています。これらの出土品は、古代より鴨族がこの地に定住し、農耕文化を築いてきたことを物語っています。
鴨都波神社の主祭神は、積羽八重事代主命(つみはやえことしろぬしのみこと)と下照姫命(したてるひめのみこと)で、配祀神として建御名方命が祀られています。
事代主神は、古くから鴨族の祖神として信仰されてきた神であり、当社こそが事代主神信仰の本源とされています。事代主神は大神神社(奈良県桜井市)に祀られる大物主神の御子神とされることから、鴨都波神社は「大神神社の別宮」とも称されています。
社伝によれば、崇神天皇の勅命を受け、大田田根子命の孫である大賀茂都美命がこの地に神社を創建したと伝えられています。古くは葛城加茂社、または下津加茂社とも呼ばれ、宮中八神の一社として鎮魂祭にも関わるなど、朝廷からの信仰も篤い神社でした。
延喜式神名帳には「鴨都波八重事代主命神社 二座」と記され、月次祭や新嘗祭に際して幣帛を受ける名神大社として記録されています。近代に入り、大正10年(1927年)に県社へ列格しました。
鴨都波神社の古称は「鴨都味波八重事代主命神社」とされ、「鴨の水端(みづは)」の神を意味すると解釈されています。葛城川と柳田川の合流点という立地から、古くは水の恵みを司る神として信仰されていた可能性も指摘されています。
境内には、市指定文化財である本殿が鎮座し、棟札によれば天保12年(1841年)の建立とされています。また、奈良県指定有形民俗文化財の祭礼渡御図絵馬は、往時の祭礼の様子を今に伝える貴重な資料です。
鴨都波神社の最大の見どころの一つが、御所の献灯行事です。毎年7月16日の夏祭りと、10月の秋祭り宵宮に行われ、五穀豊穣・家内安全・無病息災を祈願して、氏子地域からススキ提灯が奉納されます。
ススキ提灯は、高さ約4.5メートルの竹の支柱に、10張の高張提灯を三段に組み上げた勇壮なもので、その姿は実り豊かな稲穂を象徴すると伝えられています。30基を超える提灯が一堂に集う光景は圧巻で、奈良県南部でも最大級の献灯行事として知られています。
この行事は平成12年(2000年)に奈良県指定無形民俗文化財に指定され、現在では多くの見学者が訪れる御所市の夏・秋の風物詩となっています。近年は外国人留学生の参加もあり、観光と異文化交流の場としても重要な役割を果たしています。
鴨都波神社は、弥生時代から続く人々の営みと信仰、豪族鴨氏の歴史、そして現在まで受け継がれる祭礼文化が重なり合う、非常に奥深い神社です。静かな境内に立てば、水と大地に感謝しながら生きてきた古代人の祈りを、今なお身近に感じることができるでしょう。