葛木御歳神社(かつらぎ みとし/みとせ じんじゃ)は、奈良県御所市東持田に鎮座する由緒正しい神社です。『延喜式』神名帳に記載された式内社(名神大社)で、近代社格制度では郷社に列せられました。全国に数多く存在する御歳神社・大歳神社の総本社とされ、古来より朝廷や人々から篤い信仰を集めてきた古社です。
葛木御歳神社は、同じ御所市に鎮座する高鴨神社(上鴨社)、鴨都波神社(下鴨社)の中間に位置することから、古くより「中鴨社」と称されてきました。これらの神社はいずれも古代豪族・鴨氏との関わりが深く、葛城地方が古代信仰の中心地であったことを今に伝えています。
主祭神は、穀物の実りを司る神として知られる御歳神(みとしのかみ)です。相殿には、父神である大年神、そして高照姫命が祀られています。「トシ」という言葉は、稲や穀物の実りを意味する古語であり、御歳神は五穀豊穣をもたらす神、農耕と深く結びついた神として信仰されてきました。
古来、朝廷で年のはじめに行われた祈年祭(としごいのまつり)では、まず御歳神の名が読み上げられたと伝えられています。それほどまでに、国家の安定と人々の暮らしに欠かせない神として重んじられていた存在でした。
創建年代は不詳とされていますが、社殿背後にそびえる御歳山(三歳山)を神体山とし、神代の昔より信仰されてきたと伝えられています。弥生時代から神の宿る地とされ、かつては山そのものを神奈備(かんなび)として、磐座に神を迎える原始的な祭祀が行われていたと考えられています。
国史によれば、仁寿2年(852年)には従二位、同年に正二位、さらに天安3年(859年)には従一位という極めて高い神階を授けられました。これは、当時の大和国においても特別な格式を誇る神社であったことを示しています。また、水害の際には朝廷から奉幣を受け、風雨を鎮める神としても信仰されていました。
現在の本殿は、一間社春日造で、江戸時代に春日大社本殿第一殿を移築したものです。これは、葛木御歳神社がかつて春日大社の荘園と関わりを持っていた歴史を物語っています。本殿前には拝殿が建ち、厳かな雰囲気の中で参拝することができます。
境内には、天照皇大神神社、事代主命神社、一言主命神社など、多くの摂末社が鎮座し、古代神話の世界を身近に感じられる構成となっています。
私たちが正月にお祀りする年神さまは、御歳神・大年神・若年神を指すとされています。正月に供える鏡餅は御歳神へのお供えであり、そのお下がりには神の魂が宿ると信じられてきました。これを「おとしだま」と呼んだことが、現代のお年玉の語源とされています。
葛木御歳神社は、五穀豊穣や物事の始まりを祈願するのにふさわしい神社として、今も多くの参拝者が訪れます。自然豊かな葛城の山々に抱かれた境内は、静かで清々しく、古代から続く信仰の重みを感じさせてくれる場所です。御所市を訪れた際には、日本の農耕文化と年神信仰の原点に触れることのできるこの神社を、ぜひ訪れてみてください。