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御杖神社

(みつえ じんじゃ)

村名の由来を今に伝える古社

御杖神社は、奈良県宇陀郡御杖村神末に鎮座する由緒ある神社で、延喜式神名帳に名を連ねる式内小社です。旧社格は郷社で、御杖村の歴史と信仰の中心として、古くから人々に崇敬されてきました。奈良県の東端、三重県伊勢にほど近いこの地は、大和と伊勢を結ぶ交通・信仰の要衝であり、神社の成り立ちも伊勢神宮の起源に深く関わっています。

倭姫命の伝承と「御杖」の物語

御杖神社の最も大きな特徴は、倭姫命(やまとひめのみこと)にまつわる伝承です。社伝によれば、第11代垂仁天皇の皇女である倭姫命は、天皇の勅命を受け、天照大神(あまてらすおおみかみ)をお祀りするにふさわしい地を求めて各地を巡られました。その長い旅の途中、この御杖村に立ち寄り、一夜を過ごされたと伝えられています。

その際、倭姫命が使用していた古い杖をこの地に残されたことから、村人たちはこれを「神様の杖」として敬い、「御杖(みつえ)」と呼ぶようになったとされます。これが御杖村、そして神社が鎮座する神末(こうずえ)という地名の由来になったと語り継がれています。また別の説では、天照大神をお祀りする候補地の印として杖を置かれたとも伝えられています。

静寂に包まれた境内と御神木

御杖神社は、県境に近い神末の集落にあり、川のほとりに広がる境内へと足を踏み入れると、まず杉の巨樹が並ぶ厳かな景観が迎えてくれます。鳥のさえずりと川のせせらぎ以外に音はなく、森閑とした空気が漂い、訪れる人の心を静かに整えてくれます。

拝殿の両脇には、「上津江杉(かみつえすぎ)」と呼ばれる樹齢600年以上の二本の御神木が天に向かってそびえ立ち、長い年月この地を見守ってきたことを感じさせます。拝殿は入母屋造、本殿は素木の神明造で、簡素ながらも清らかな佇まいが印象的です。

お祀りされる神々

本殿には、境界や道を守る神として知られる久那斗神(くなどのかみ)を主祭神に、八衢比古神(やちまたひこのかみ)八衢比女神(やちまたひめのかみ)が祀られています。いずれも人々の行く道を守り、災厄を防ぐ神々であり、伊勢へと続く街道沿いの神社としてふさわしい神格を備えています。

伊勢本街道と周辺に残る倭姫命の足跡

御杖神社や近隣の四社神社はいずれも、大阪・奈良と伊勢を結ぶ伊勢本街道の近くに位置しています。倭姫命はこの街道を通り、旅を続けられたとされ、神末の東北にある敷津の地には「月見石」が残り、さらに近くの姫石明神では婦人病の全快を祈願されたという伝承も残されています。

日本の原風景が広がる社頭の景色

境内を一歩出ると、目の前にはゆったりとした棚田が広がり、季節ごとに表情を変える里山の風景を楽しむことができます。稲穂が風に揺れる様子や、遠くに淡く望める三峰山の姿は、まさに日本の原風景そのものです。参拝とあわせて、周囲の自然散策もおすすめです。

御杖神社の秋祭り

毎年11月の第1日曜日には、五穀豊穣を祈願する秋祭りが盛大に行われます。太鼓を叩く子どもたちを乗せた太鼓台(御神輿)が、威勢の良い掛け声とともに地区内を練り歩き、境内に練り込む様子は迫力満点です。地域の結束と伝統文化を肌で感じられる、御杖村ならではの行事です。

歴史と社運の変遷

御杖神社の創建年代は不詳ですが、社伝では倭姫命がこの地に行宮を設け、御休座されたことをもって創祀としています。延喜式神名帳には大和国宇陀郡17座の一座として記載され、古代より朝廷の崇敬を受けてきました。

天文15年(1546年)には争乱により荒廃しましたが、同23年(1554年)に再建され、明治6年(1873年)には郷社に列せられました。こうした歴史を経て、現在も地域の信仰を支える存在として大切に守られています。

境内社

境内には以下の境内社が祀られ、さまざまな御神徳を授けてくれます。
木花佐久夜毘女神社(木花開耶姫命)
龍田神社(志那都比古神・志那都比女神)
藪中神社(久延毘古命)
愛宕神社(迦具土命)
秋葉神社(迦具土命)
金刀毘羅神社(大物主命)
稲荷神社(大田命)

現地情報

所在地:奈良県宇陀郡御杖村神末1020
伊勢本街道の歴史と、倭姫命の伝承が息づく御杖神社は、静かに参拝したい方や、日本の原風景と信仰文化に触れたい方におすすめの神社です。

Information

名称
御杖神社
(みつえ じんじゃ)

明日香・橿原

奈良県