長柄神社は、奈良県御所市名柄に鎮座する由緒ある神社で、延喜式内社に数えられる古社です。旧社格は村社で、古くから地域の信仰の中心として大切に守られてきました。葛城山麓の穏やかな里に佇むその姿は、古代から続く祈りの歴史を静かに伝えています。
長柄神社の祭神は、下照姫命(したてるひめのみこと)です。下照姫命は、葛城地方の神話や系譜と深く結びつく女神で、その気品ある神格から、当社は古くより「姫の宮」とも呼ばれてきました。
文献によっては、事代主命や高照姫命を祭神とする説も伝えられています。これは、当地を本拠とした長柄氏(長柄首)の祖神信仰や、葛城一言主神社・高鴨神社の姫宮とする伝承が重なり合って形成されたものと考えられています。こうした複数の伝承は、長柄神社が古代葛城信仰の重要な一角を担ってきたことを示しています。
創建年代は明らかではありませんが、『古事記』や『日本書紀』には「葛城長江」や「長柄丘岬」といった地名が登場し、この一帯が古代から特別な場所であったことがうかがえます。「長江」や「長柄」は、葛城山の長く伸びる尾根を意味する言葉とされ、地形と信仰が結びついていたことを物語っています。
また、神社周辺からは名柄銅鐸や多紐細文鏡が出土し、5世紀中頃の首長居館跡とされる名柄遺跡も確認されています。これらの考古学的成果からも、長柄神社周辺が古代豪族の拠点であったことが明らかになっています。
平安時代に編纂された『延喜式』神名帳には、「長柄神社 小 鍬靫」と記され、朝廷の祈年祭において鍬や靫が奉献されたことが記録されています。これは、農耕や武に関わる信仰と深く結びついた神社であったことを示し、国家的にも重要視されていた存在であったことがわかります。
境内の中心に建つ本殿は、一間社春日造の建築で、奈良県指定文化財に指定されています。丹塗の社殿は端正で美しく、屋根は現在銅板葺ですが、かつては檜皮葺であったと伝えられます。細部には禅宗様の影響も見られ、造営は室町時代中頃まで遡ると推定されています。
本殿には正和元年(1312年)を最古とする17枚の棟札が伝えられており、長い年月にわたって社殿が大切に守り継がれてきたことがうかがえます。軒下に描かれた「八方睨みの龍」は、どの角度から見てもこちらを見据えるような迫力があり、訪れる人の印象に強く残ります。
境内には大きな欅をはじめとする広葉樹が茂り、四季折々の自然が楽しめます。ベンチや遊具も整えられ、現在では参拝だけでなく、地域の人々が集う憩いの場としても親しまれています。長柄神社は、古代から続く信仰と、現代の暮らしが穏やかに共存する、御所市を代表する歴史ある神社といえるでしょう。