曽爾高原は、奈良県宇陀郡曽爾村大字太郎路に位置する、関西屈指の景観を誇る高原です。倶留尊山(くろそやま)と亀山の西斜面から麓にかけて広がるこの高原は、室生赤目青山国定公園の第一種特別地域に指定されており、豊かな自然環境と貴重な生態系が今も大切に守られています。
標高約700メートルに広がる高原一帯は、四季折々に表情を変え、訪れる人々を魅了します。なだらかな地形と広大な空、そして山々に囲まれた景観は、日常の喧騒を忘れさせてくれる癒やしの空間です。
曽爾高原の面積はおよそ38ヘクタール。倶留尊山(標高約1,038メートル)と亀山(標高約849メートル)に抱かれるように形成された高原は、風通しがよく、晴れた日には遠くの山並みまで見渡すことができます。
高原中央部にはお亀池(おかめいけ)と呼ばれる湿地帯があり、希少な動植物が生息しています。この湿地は曽爾高原の自然を象徴する存在であり、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。
春になると、曽爾高原では伝統的な山焼きが行われます。これは景観の維持や害虫の駆除、草原の更新を目的とした重要な行事です。山焼き後の黒く染まった大地から、やがて新しい芽が芽吹き、初夏には鮮やかな緑の高原へと生まれ変わります。
秋の曽爾高原は、最も多くの人々が訪れる季節です。お亀池周辺の湿地を除く高原一帯が、黄金色のススキに覆われ、風に揺れる穂が幻想的な風景を作り出します。特に夕暮れ時、黄昏色に染まるススキ野原は、写真愛好家にも高い人気を誇ります。
曽爾高原の背後にそびえる倶留尊山は、三重県津市と奈良県曽爾村にまたがる高見山地の山で、日本三百名山の一つに数えられています。別名「伊賀富士」とも呼ばれ、その美しい山容は古くから人々に親しまれてきました。
倶留尊山は第三紀に活動した火山の名残とされ、三重県側の斜面には火山岩による柱状節理が見られます。この大障壁は「賢却千仏(けんきゃくせんぶつ)」と呼ばれ、山名の由来にもなっています。
山頂には三等三角点「具留尊山」が設置されており、登山者にとって一つの目標地点となっています。
倶留尊山への登山は、曽爾高原を起点とするルートが代表的です。国立曽爾青少年自然の家付近からお亀池を経て亀山峠へ登り、稜線を北上して二本ボソを通過し、山頂を目指します。
稜線からは曽爾高原を見下ろす雄大な景色が広がり、四季を通じて異なる自然の表情を楽しむことができます。なお、二本ボソから山頂部は私有地のため、環境保全協力金として入山料が必要となっています。
バスを利用する場合、近鉄大阪線名張駅から三重交通の路線バスが運行されています。春から秋にかけては、曽爾高原ファームガーデンを経由し、曽爾高原バス停まで直通する便もあり、観光シーズンには便利です。
それ以外の時期は、太良路バス停で下車し、徒歩で高原へ向かいます。道中は山里の風景を楽しみながら歩くことができ、自然散策を兼ねたアクセスとなります。
大阪方面からは名阪国道針インターチェンジを利用し、国道369号を南下して曽爾村へ向かいます。名古屋方面からは名阪国道上野インターチェンジを下り、伊賀市・名張市を経由するルートが一般的です。
近年はバイパス道路の整備が進み、以前に比べてアクセスが向上しています。
曽爾高原の玄関口ともいえる施設で、地元食材を使った食事や特産品の販売が行われています。観光の拠点として、多くの来訪者が利用します。
散策や登山の後に立ち寄りたいのが曽爾高原温泉「お亀の湯」です。露天風呂からは周囲の山々を望むことができ、自然の中でゆったりとした時間を過ごせます。
自然体験学習の拠点となる国立曽爾青少年自然の家や、家族連れに人気のみつえ高原牧場など、周辺には多彩な施設が点在しています。
曽爾高原は、広大な草原景観と豊かな自然、そして倶留尊山をはじめとする山岳美が調和した、奈良県を代表する観光地です。四季それぞれに異なる魅力を持ち、訪れるたびに新しい感動を与えてくれます。
自然散策、写真撮影、登山、温泉と、さまざまな楽しみ方ができる曽爾高原は、心と体をリフレッシュさせたい人にとって最適な場所といえるでしょう。